06 「お前、下着のサイズってどんくらい?」 そう聞いた俺に顔を真っ赤にして力いっぱいに投げられた枕は、見事に俺の顔に命中した。 信じらんない!阿部がそんなセクハラ言うなんて!とキーキー喚き散らすと、「もう!ホント最低!」と今度はベッドのリモコンを取ろうとする手を掴んで止めた。 どれだけ意を決して確認したかは全く伝わってないらしい。 「アホか、着替えがいんだろ!」 「あ、そっか」 「誰がお前のまな板みたいな胸に興味湧くかよ」 「そ、それは言いすぎなんじゃないの!?」 「いーから!サイズを言えサイズを」 自分で買いに行くからいいと渋るのは計算のうちで、俺の財布を高々を掲げれば俯きながら渋々白状すると、背中を丸めてみるみると小さくなっていった。 そんなに恥ずかしいことなのかどうかは男の俺には理解できないことだったが、やっぱり朝一番にしかも直球で聞いたのは悪かったと思い、「学校帰りに好きもん買ってきてやるから」と言えば、目を輝かせる。 だから機嫌直せよ、と言う前に「ハーゲンダッツのキャラメル味ね!」とあの落ち込みようが嘘のように元気になった。 何気なく高いものを強請るあたり、神経の図太さに呆れを通り越して感心する。 「お前はもうちょっと遠慮ってのを学べ」 「女の子の胸のサイズは墓まで持って行きたいものなの!それを聞き出したんだからまだまだ安いわよ」 プイ、と顔をそらして拗ねた様子に思わず笑いが零れる。 この狭い部屋に1人残して行くのは少し気が引けるが、出発しなければならない時間が迫っていた。 退屈な時間を強いることになるのも仕方ないと自分に言い聞かせ「、じゃぁ行ってくっから、誰か来ても絶対開けんなよ」とだけ言い残し、まだ拗ねている様子に苦笑して玄関へ向かう。 「いってらっしゃい」 不意に聞こえた言葉に振り向くと、顔をそらしたまま照れくさそうな表情が横顔から見えて何とも言いがたい気持ちが胸を満たした。 この家に引越して来てから、この部屋では初めて聞くその言葉に少し照れながら「いってきます」とだけ言って家を出る。 参った、これは思った以上に効く。 まだ頭の中で響く「いってらっしゃい」の言葉に柄にもなく顔に熱が集中した。 「すげー破壊力」 時をかけた少女 (きみには叶わない) 「あ、もしもし早くにわりぃ。実は親戚の女の子が家出して俺ん家来たんだけど、何も持たねぇで来たから換えの下着とかねぇんだよ。後で金は払うから今日中に頼まれてくんね?…はぁ!?…ったくわーったよ、おごってやるよそんくらい!」 どいつもこいつもハーゲンダッツばっか強請りやがって! |