18 「たった1つの想いを貫く難しさの中で阿部は、何年もずっとその子を好きでいたんだよ」 その言葉がずっと、頭を離れない。 家まで送ってくれるという申し出を断って、1人で物思いにふけりながら日の暮れた道を歩いた。 家に着くまでに頭も気持ちも落ち着けなければと思っていても、なかなか整理もできなければ普通に振舞える自信も湧いてこない。 マネジさんの別れ際の一言も手伝って、私に大きな衝撃を残したままでいる。 「あの短気男が何の気もなしに女の子の世話なんか焼くわけないでしょ」 言われてみればそうなわけで、今まで疑問に思わなかった私自身の能天気さに呆れた。 丁度帰り道にあるマンション近くの公園に、寄り道して、ベンチに1人佇む。 困ったな、どうしようか。 マネジさんは直接言葉で言ったわけじゃないけれど、それを察せないほど私だって鈍くはないと思いたい。 それはつまり、そういうことなのだろう。 嬉しいよりも先に思ってしまったどうしようという気持ちが、余計に私を戸惑わせる。 ねぇ、阿部。 どんな気持ちで私といてくれているの? 「ったく…探しただろバカ!」 すっかり暗くなった視界が、更に暗くさを増す。 ゆっくりと顔を上げれば、息肩で息をする阿部がひどくご立腹な様子で立っていた。 「お母さんたちは?」 「もうとっくに帰った」 「大丈夫だった?」 「何で真っ直ぐ帰って来なかった?」 疑問で返される疑問。 言えるわけもない理由に、私は笑い「まだ早いかなと思って」なんて適当な理由を作ればやっぱり納得していない顔だ。 「心配、させんな」 本当に心配をしてくれていたと分かるほど、安心した顔をする阿部に私はまた心が膨らむのが分かる。 違うよ、マネジさん。 あなたはまるで阿部の気持ちの方がすごく大きいみたいに言っていたけれど、違うんだよ。 「阿部」 「ん?」 「私ちゃんと、ここにいる?」 東京の空は星が見えないって誰かが言っていていたけれど、そんなことないと思う。 見上げた夜空には小さくてもそこで光ってるものがあるじゃないか。 ねぇ、阿部。 そこに光は、あるよね。 時をかけた少女 (ここに、いました) 「アイス、食いてぇな」 付き合えよ、と一言を残して無言のまま阿部は私の手を取って歩き出す。 初めて繋いだ手は大きくてゴツゴツしていて、男の人の手だった。 「手を繋げるのがその証拠だろ」 いつだって私の方が阿部を求めて、阿部を想っているんだよ。 |