時をかけた少女 | ナノ



09

「お前、マジでのび太かよ…」

思いの外遠出になってしまった外出に疲れていたのは分かるが、この寝つきの良さには驚かされっぱなしだ。
布団に入って3秒なんて、もしかしたらギネスを狙えるかもしれない。
呆れながらもそれもまた可愛いなんて思ってしまう気持ちは、やっぱりこいつに絆されているんだろうか。
とにかく言えることは1つだけ。
5年前から持ち続けている未消化なままのこの気持ちが、どんどんと育っていることだ。
5年前のままの姿で現れたクラスメートと接するうちに、俺自身も西浦の1年坊主だった頃の自分に戻ったような錯覚に陥ることがある。
まるであの頃の、必死に話題を探して話しかけていた初々しい自分のままのような気持ちは気恥ずかしさやら懐かしさやらで、正直気分が複雑なのは否めない。
それでも喜んでくれれば嬉しいし、笑ってくれればもっと嬉しい。
そんなことを思っている時点で何をどう否定して誤魔化したって答えははっきりしていた。

俺はまだ、こいつのことが好きだ。

横向きにならないと眠れないと言っていた通り、こちらに顔を向けて眠るその頬にそっと唇を落とす。
眠りの体勢に入ればちょっとやそっとでは起きやしないのび太体質に、初めて感謝した。


時をかけた少女
(おやすみのキスでは目覚めない)



愛してる。
そう言葉にできたなら、少しでもお前は近くなるんだろうか。
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