髪結いを生業としていたせいか昔から綺麗な髪が好きだった。

「狐様は伸ばさないの」

学園で一番髪の短い彼の髪もまたそうであった。一本一本がまるで神秘的な白銀をしていた。

「タカ丸さんと違て手入れは苦手やから」
「でもきっと狐様が伸ばしたら今よりもっと綺麗になるだろうに」

ふた月に一度、髪を整えてくれと4年長屋までやってきてくれる。
それが唯一の僕と狐様の時間。
仲が良くないわけじゃないけど、学年も委員会も違うと会う回数が必然と減ってしまう。
だからふた月に一度のこの時間が僕は好きなのだ。

「終わったよ。どこか気になるところは?」
「いや、丁度やわ。さすがタカ丸さんやね」

ただ、終わりの時間は嫌いだ。
けれど、いつも最後には必ず狐様は僕の頭を撫ぜてくれるから終わりの時間すら待ち遠しく思えてくるから不思議だ。

「また、髪が伸びたらおいでよ」


110105
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