何が起きたのか全くといっていいほど分からなかった。目の前には、目の前には。
「なまえ!」
勢いよく扉を開け、屋上へと入ってきたのは隼人だった。それに数秒遅れて入ってくる人、人、人。
「大丈夫か、おい、何があった」
未だに座り込んでいる私を抱き起しながら隼人は問いかけてくる。こんなに焦っている隼人は初めてかもしれない。
「獄寺くん、ダメだよ」
隼人の後ろから声が聞こえた。
「じゅう、だい め ?」
「獄寺くん、これでもまだあんなやつの言うこと信じるっていうの?」
ツナはまるでそこに私が居ないかのように、喋り出す。
「傷だらけの怜華ちゃんに、無傷の女。どっちが悪いか頭の良い獄寺くんは分かるよねえ」
これがあのおどおどしていたツナなんだろうか。
ツナのこの言葉は状況の呑み込めていない隼人にどう、伝わったのだろうか。
「ほら、みんなが怜華ちゃんを保健室に連れて行ったから、一緒に行こうよ」
私から手を離して、大好きなツナの手をとるのだろうか。
「もちろん分かっていますよ」
心のどこかで、隼人を疑い、心のどこかで、隼人を信じていた。それは確信に変わり。
「悪いのはなまえではなく怜華だってことくらい」
貴方の優しさに溺れ、生きていく。
(驚くツナの顔が怒りに歪んだ)