なまえは泣きじゃくりながら俺にありがとうと呟いた。
(俺は、傷つけたはずなのに)
昨日家に帰った後、怜華の腕の違和感に気付いた。普通イジメる為に怜華の腕を切りつけたのなら手首だなんて分かりやすい所にしないはずだ。ましてやなまえは血が大嫌いだ。
(この前俺のケガを見たとき倒れそうになってやがった)
そんな奴が血を見ると分かる行為をするはずがない。
それになまえが見せたあの笑顔。
(とても、悲しそうだった)
嗚呼そうか、これは怜華の自作自演だったのか。冷静に考えればよく分かるはずだ。
くそ、どうして俺はその場で気づいてやれなかったんだ!なまえのあんな笑顔今まで見たことがなかったいつも楽しそうに、幸せそうに笑う奴なのに、
簡単に怜華を信じた俺がバカだった。
(許してくれ、なまえ)
俺は知ってる独りの寂しさを。ピアノを弾いてたからだとか、東洋人とのハーフだからとかでどこのファミリーにも入れてもらえなかった日々があったから俺は心から言える。
「もうお前を裏切らねえし、独りにもさせねえ」
「今日から俺がお前を護ってやる。だから、泣くななまえ」
お前は今までにないくらい綺麗な笑顔を見せてくれた。
俺が欲しかったのはその笑顔だ。
(10代目がなんと言おうと俺はお前を信じてる。)