山本に殴られた頬がずきずきと痛む。歯を食いしばらなかったから口の中に血の味が広がる。痛みと悲しさで涙が出そうになってきた。
「なんて顔してんだよ」
驚き声のする方へ顔を向ける。
「は、やと…?」
「んだよ。俺の名前分かんなくなったのかよ」
そう言いながら隼人は口の端に付いた血を拭ってくれた。
「ど、して」
確かに昨日隼人は私を責めてきた。睨んできた。
なのに、今は
(なんでそんなに優しく微笑むの。)
「ちょっと話てぇことがある。」
ついて来いって隼人は私の手を握る。
(優しく、)(それでいてしっかりと。)
隼人に連れてこられた場所は今は使われていない空き教室だった。私が隼人を見つめると隼人は切り出した。
「確認だ。お前は本当に怜華に手を出してないんだな?」
「…!出してない!」
また、責められると思ってると隼人は俯きごめんと謝った。
「……え?」
「だから、お前を責めたことだ。あの後家に帰って考えたんだ。」
あの傷は怜華自身でも付けられる場所にあった。それに、なまえは血が嫌いなはずだ。
そうだろ?と問いかける隼人に私は嬉しくて涙が出てきた。
「お、おい!なんで泣くん「隼人は、私を信じてくれるの?」
半信半疑だった。またあの目で睨まれるかと
思って。その問いに答えてくれる間が私にとったら、長くて長くて。
「あぁ。信じてる。」
そう言った君の笑顔は眩しかった。
(ありがとう。気づいてくれて、信じてくれて、また私の名前を呼んでくれて)