落乱 鉢屋三郎


※暴力表現注意






「ねえ、ごめん。ごめんよなまえ。許してくれ」

下に目線を向けると綺麗に細工を施された簪は今は有らぬ姿で床に転がっている。中心からぽっきりと折れてしまっている。

「そんなに謝るなよ、三郎」
「でも、怒っているだろう?ごめん、ごめんよ」

顔を青くさせ、必死に装束にしがみつく。三郎はしっかりと私に謝罪をした。だから私は許した。けれども三郎は気に食わなかったらしく、今でも謝り続けている。

「怒ってなどいないさ。だからもう謝るな」
「嘘だ!怒っているじゃないか」

私は、謝られ過ぎるのは好いていない。再三言うが、三郎はちゃんと私に謝罪をしたのだ、それで終わりで良かったんだ。なのに三郎はいつまでも謝り続ける。その上、私が怒っているなどと勝手に決めつける。ああ、腹の立つこと。

「なあ、三郎。私は簪のことで怒ってないと言ったじゃないか」
「、!」

固く握りしめた拳が三郎の頬を歪ませる。

「でも三郎は私を怒らせたいみたいだから。ほら、これで満足だろう。お前は殴られるのが好きだものな。感じるんだろう。私は別に偏見などしたりはしないさ。お前がイくまで、相手をしてあげよう」

私は、謝られ過ぎると苛ついてしまうんだよ。




120122
簪は男主の母親の形見。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -