「死なないねぇ」

いつになったら僕たち死ぬんだろうねぇ。ダルそうに語尾を伸ばしながらあいつは言う。今日は覚醒したフリッピーに会ったそうだ。道理で道端に転がってたあいつの内臓がサイコロステーキのようになっていたのか。

「この村にいる限り死ねねえよ」

そうだ。俺たちの住むこの村は不死の村だ。お陰で毎日、自分や他人の臓器を見て過ごしている。そう言えば昨日、俺とリフティは死んだんだっけ。あいつはスプレンディドに助けられて顔の皮が剥がれたっつってたな。

「死ぬのに慣れちゃったらどうしようか」

相も変わらずダルそうに言ってのけるが、最近あいつはこの言葉を必ず口にするようになっていた。幸い、俺たちはまだ、死ぬのには、慣れていない。自分の体が切り刻まれようが、腕が千切れようが、毛細血管が全て抜けようが、身体中穴だらけになろうが、それらが、日常茶飯事だとしても、やはり、俺らも生きている限りは死ぬ寸前は恐怖に戦くのだ。

「慣れねえよ、きっと。慣れてたまるか」

遠くのほうで、カドルスが、俺らに手を振る。まあ、大方、俺には振っちゃいないんだろうが。にこにこ笑いながら走ってくるカドルスを見ながら、俺は、腰を浮かせる。

「そろそろ盗みの時間だ」

カドルスの後ろから、俺の顔によく似た、アホ面の男が現れた。手には鈍器。ああ、可哀想に。





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