魔法 ハリー


「“息絶えよ”」
「ほら、言ってごらんよ」

僕の杖を掴み自分の左胸の前まで持ってきてファーストネームは言う。
体中から汗が溢れ出す、それなのに、全身の熱はどこかに消え失せている。

「言え、ないよ、言うもんか」
「弱虫」

ファーストネームの身長は高い方だ、けれど、もちろん僕の方が彼女より高い。必然的に彼女が僕を睨み上げる。

「大丈夫よ、この距離なら外せないもの」

そうなのだ、僕の杖が彼女の左胸に軽く触れる距離にある以上、外したくても外すことはできない。

「杖、離してよ」

予想外に、ファーストネームの杖の握る力が強い。

「離して」
「たった一言なのにね」

ファーストネームがため息を吐くと同時に僕の杖は自由を得る。

「デザートが食べたいわ」

そう言って弧を描く彼女の唇。その動作がまるでスローモーションのように見えた。






110625
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -