骸雲 | ナノ

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- 青、青、青。 -


迎えに来てくれる骸を待つこの時間のこの街の景色が好きなんだ。街がきらきら輝いて、その中を骸が僕のためにここまで車を走らせてくれているなんて、僕はなんて幸せなやつなんだ。


「雲雀さんお疲れさまです」

「お疲れ」


退社するみんなの背中がこの景色に溶け込んでゆくのを見つめながら、骸の車が早く来ないか待ち遠しくて、今日の晩御飯はどこかに食べに行こうかとかいろんなこと考えるだけで、僕は充たされているなあと感じる。
見覚えのある車が向こうの交差点を曲がってこっちに向かっているような気がした。するとすぐにそれは僕に近づき、僕はそれが骸の車だと分かった。隣街で働いてる骸がここまで来てくれるなんて、すごく嬉しくて、もう今すぐにでも抱きしめてもらってキスがしたい。
僕はビルの下から車道の方へと歩く。目の前に車がさっと停車し、僕はにやけそうになるのを我慢して車に乗る。車内はいつも通り英語の歌詞と骸の車のにおいで溢れていた。僕はそれを肺にたくさん吸い込んで、それを吐き出すのがもったいない気がして、ゆっくりと息を吐いた。


「おかえり」

「ただいま」


窓から見える僕のだいすきな街の景色はどんどん後方に流れてゆき、次第に光が線のように見えてきた。信号は3つ先まで青、青、青。


「晩御飯、どこかに食べに行きません?」

「僕もそうしようと思ってた」


同じこと考えてたんですね、という骸の言葉が嬉しくて、しょうもないことなのに心の底から幸せだと感じて二人で笑いあった。車は相変わらず速度の早いまま走り続けているのに、僕と骸との間で流れる時間はとてもゆっくりな気がする。
ゆっくりとした幸せな時間をもっともっと積み上げて、骸の失っていた、止まっていた時間を埋める、いや、取り戻すことができたらいいのに。心の中でそれが現実となりますようにと願った。

僕に愛されてる骸が好きで、骸に愛されてる僕が好き。愛し合う僕たち二人はもっと好き。

信号は3つ先まで青、青、青。



青、青、青。














10/3/6
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