骸雲 | ナノ

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- 初めて -


みんな、僕の表情が柔らかくなったと言う。僕の性格が温和になったと言う。以前と比べて、ね。




休日だというのに僕は学校へ出向き、委員の仕事を一通り終えて、応接室で宿題をしていた。少し開いた窓から秋の風が入り込み、カーテンを揺らしているみたいで、ノートにゆらりゆらりと影が映っては消えてを繰り返した。
僕はそのせいでか、もう少しで解けそうだった問題の答えが頭からすっと消えてしまった。

「なぜ続きを書かないんです?」

突然の声に驚いて振り向き、両手には反射的にトンファーが握られていた。風ではない、カーテンを揺らした犯人は軽々と僕をかわして、クフフといつもの奇妙な笑い声を漏らした。

「なんだ君か。」

徐々に速まる胸の鼓動や、急上昇する体温に伴い赤くなる頬を骸に悟られないように、僕は素早く向きを変えて椅子に座ろうとした。
そんなことはお見通しだと言わんばかりに、骸は僕の腕を掴んで引き寄せた。骸の睫毛の長さがよりはっきりと認識できるくらいの距離まで顔が近づく。

「気分転換も必要です。」

骸の近づいた顔はさっと離れ、僕の腕を放したかと思うと、今度は僕の手を握って引っ張るように歩き出した。
骸の手はとても熱かった。僕の手よりも熱かった。



きっと骸も僕と同じでこういうのが初めてなんだ。たしかに骸は僕より多くを知っている。だけどそれは上辺だけの薄っぺらなもので本心からのものではない。
だから主導権を握っているように見える骸も僕と同じ。お互いの行動の一つ一つに左右される。
最初はそれに戸惑い、苛立ち、不安に駆られる。しかし次第にそれは心地よくて、どこかむず痒くて、手放したくはないものになっていった。たとえ昔の自分とは異なる自分になったとしても、今まで知らなかったものを二人で知りたいと思った。

お互いにお互いを好きだと認めることは何も怖いものではなかった。







「最近、骸さんなんだか優しい気がするびょん。」
「まるで僕が普段は優しい人ではないような言いぐさですね。」
「そ、そういう意味じゃなくて…!」
「骸様はよく笑うようになったんだよ、犬」
「うるへー眼鏡!」













2011/10/2
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