骸雲 | ナノ

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- 消える -


どうして僕を見てくれないんだ。どうして僕に触れてくれないんだ。どうして僕を遠ざけるんだ。どうして、どうして、どうして。
棚にきちんと整頓されて置かれている薬品の入った瓶を、僕は次から次へと床に叩きつけた。瓶は床でガチャガチャと音をたてて割れ、中からは有毒無毒一切合切の薬品が流れ出た。中には僕の腕に跳ね返り、皮膚を焦がしたものもあった。




ここはボンゴレのボックス兵器の研究・開発を行うラボの一室。僕の仕事場であり、僕の助手の骸の仕事場でもある。このラボで生活していると言っても過言ではないくらい僕は長い時間をここで過ごしている。もちろん助手の骸も一緒にだ。異性と接する機会もなく、黙々と仕事をこなすだけの日々。骸と二人きりで過ごす時間があまりにも長く、僕が骸に友情よりも深い好意を抱くのは必然的なものだった。
とうとう僕は自らの骸に対する好意を伝えた。告白である。僕がさらりと告白したのにも関わらず、骸は困ったような顔をして何も返事を返してはこなかった。それからも骸はあまり僕と言葉を交わそうとしなかった。以前のように冗談を言い合ったり、笑いあったりすることはほとんど無くなってしまった。僕はそれがすごく悲しかった。
程なくして骸はここに来なくなった。理由は分からない。僕と二人きりになるのが息苦しかったのかもしれないし、はたまた沢田の命で違う仕事を担当しているのかもしれない。どちらにせよ僕に一言くらい声をかけてくれたっていいのに。
僕はひとりぼっちになってしまった。毎日毎日一人でひたすらボックス兵器という名の手のひらサイズの小さな箱とにらめっこ。話し相手もなく、人間らしい生活もせず、このままでは頭がおかしくなってしまいそうだ。そう思うと、急に切なくなる。骸がいたらいいのに。しかし、もし今骸が戻って来たとしても僕らの関係はもう前のようなものではなくぎくしゃくしたものなのである。そう思うと余計に悲しくなった。
僕は骸にもう一度構ってほしかった。もう一度骸の目に僕を映してほしかった。そう思うと、もう僕は自分で自分を抑えられず、何が起きているのかさえわからない状態に陥ってしまったのだ。





ひと通り棚に置いてあった瓶を割り尽くすと、僕はあまりの危険性により開発中止になったボックス兵器を金庫から無理やり取り出し、炎を注入した。無理やり取り出したせいで、警告のアラームがラボ全体に鳴り響いた。おそらくボンゴレアジトの本部にもこのアラームは鳴り響いているのだろう。
僕の炎を注入したことにより、ボックス兵器は起動を開始した。そして静かにそのボックス兵器の前に置いてあった椅子に腰掛けた。ようやく準備が整ったのか、ボックス兵器は金色に輝き始めた。僕が眩しいと感じて目を閉じた瞬間、僕は即死していた。
目、鼻、耳、口、といった体中の穴という穴からどす黒い血が流れ出た。頭蓋骨の中で融解してしまったと思われる脳みそも同じように溢れてきた。どうやら眼球も跡形もなく消え去ったようで、目は陥没してしまっていた。

これで多少は骸が僕のことを見て、僕について思考を巡らせるだろう。そう思うと僕は嬉しくて心がむず痒くなった。
















2011/2/21
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