骸雲 | ナノ

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- 夢 -


僕は睡魔に襲われて、応接室のソファーに横になった。一人暮らしなので、今日夕飯何にしようかと考えているうちに眠りについた。

夢を見た。薄紫のふわふわの雲の上に、藍色のさらさらした霧のたちこめる所に立っている夢を見た。柔らかな日の光が降り注ぐ、暖かい気持ちの夢を見た。そこへ、向こうから誰かが走ってくる。姿も形も顔もわからないけど、どうやらその人は僕の恋人らしいということはわかった。
いきなり抱きしめられて驚いたけど、なんだか嬉しくなって僕もその人の背中に腕を回した。その人の声もわからないけど、僕らは笑いあった。すると、その人の顔がいきなり近づいてくる。それでも顔はわからない。そのまま近づいたその人の柔らかそうな唇が、僕の唇と重なりあった。段々エスカレートして、ちゅぱちゅぱちゅぱ、くちゅくちゅくちゅ、といやらしい音と共にその人の舌が僕の口の中で暴れる。恥ずかしいけれど、なんだか気持ちが良かったから僕も舌を動かした。
しばらくして、その人の唇が離れてどこかへ行こうとした。もう会えなくなるような寂しさに駆られた僕は、「好き!」と叫んで彼の手を掴んだ。







と、そこで目が覚めた。僕の目の前には、憎たらしい笑顔の変態がいた。今のは……夢?なのに、唇にはキスをしたときの湿り気がそのまま残っている。


「僕のこと、好きなんですか?」


目の前の骸が、自意識過剰な発言をしたので少々頭にきた。


「何言ってるの君」

「君こそ、何するんですか」


骸が腕を振ると、僕の腕も一緒に揺れた。そう、僕が夢の中で掴んだ腕は骸の腕だった。


「なかなか情熱的な方ですねぇ」

「馬鹿にしてるの?」

「濃厚なキスをされて、ストレートに好きだなんて言われたら、あたかも君が僕に好意を抱いてるとしか思えないじゃないですか」

「し、してないよそんなの」

「憶えてないんですか?」


骸の顔が近づく。急に心拍数が上昇して、頬が赤く染まる。ああ、わかった。夢の中のその人の顔が、今更だけど鮮明に浮かび上がった。骸だ。残念ながら、夢の中で僕が大好きだったその人は骸だ。


「出ていって」

「もうおわかりですか?」

「………君が出ていかないなら僕が出ていくよ」


するりと、骸の腕からすり抜けて応接室の扉へと向かった。


「あなたは僕のことが好きなんですよ!」

「………」


違う、と跳ね退けることが出来ない。ああ、やっぱり。自分の気持ちに気づいてるけど今は素直になれないんだ。時期が来れば君と向き合うことにするよ。





















09/10/26
10/6/13
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