- 僕の執事 -
※執事パロディ
クラスメートのディーノの執事であるロマーリオとやらは、日本食を作るのがとても上手だとディーノが自慢していた。まあ、その自慢がムカついたから僕は彼を殴り倒した。
また、ユニという隣のクラスの風変わりな女子の執事であるγとかいうのは、武術、戦闘力共にかなりの腕っ節らしい。毎日闘えてすごく楽しそうだから僕は彼女をうらやましく思っている。
そして僕の執事の六道骸はというと………
「恭弥お坊ちゃま!」
「お坊ちゃまとか気持ち悪いからやめろって何回言えばわかるの?」
「だって"お坊ちゃま"って言った方が執事っぽいじゃないですか。」
執事のくせに僕に文句を言ったり、バカ正直だったりと、すごく変だ。でもすごくすごくかっこいい。
彼は僕より7歳年上の新人執事で年が近いということもあって、友だちと遊ぶことを好まない僕の執事兼遊び相手としてお父様が僕によこした。全然年が近くないんだけど。彼、大人なんだけど。
「まあいいや。それより今日のご飯は?お腹すいたんだけど。」
「くふふ、ちゃんと用意してますよ。」
骸が得意そうに言うのがムカつくが、今はご飯が最優先なのでスルーすることにした。
ガチャガチャと下品な音をたてながら、骸は僕の目の前に食事の用意を施した。まったく執事のくせに何をやってもどんくさいしイマイチだし、なんで骸が執事を志望したのかがよく分からない。
「今日は洋食ですから、フォークとナイフを使ってくださいね。」
「いつも和食って言ってるだろ。僕はお箸しか使わないよ。」
「ダメです!旦那様が坊ちゃんにいい加減、洋食を食べる時のマナーを身につけて欲しいとおっしゃってましたよ。」
「……恭弥って呼んで」
「い、今そんな話してません!」
「じゃあ食べない。」
骸は照れながらも困った顔で僕を見つめていた。僕はこうやって骸をからかうのが好きだ。
「き、恭弥くん。僕が教えてあげます。」
ふわり、と骸は僕の後ろから僕を抱きしめるようにして、僕の手を掴みフォークとナイフを取った。そして、さりげなく僕のことを"恭弥くん"と呼んでいる。今度は僕の方がドキドキしてきて、骸を変に意識し始めてしまった。
「いいですか、こうやってフォークで押さえて……」
悪いけど、骸が何言ってるかなんて全然頭に入って来なかった。骸が手にはめている白い手袋越しに、骸の手の暖かさが感じられた。それだけで、僕の顔はぶわっと火がついたように、熱く赤くなる。
ああ、僕骸のことが……
「って、恭弥くん聞いてます?」
「……、き。」
「え?」
「骸のことが好き!」
僕は骸のことが好きだ。執事だけど骸が大好きだ。
骸はさっきの僕と同じように顔が真っ赤になっていた。今度はからかっている訳じゃないので、僕の顔も赤くなる。
「執事のくせにこんなこと言って良いのか分かりませんが、僕も恭弥くんのことがずっと好きでした。」
後ろに立っていた骸は、ゆっくりと僕を覗き込み顔をだんだんと近づけて、僕たちの唇は重なった。
「うそ、骸から見たら僕なんて子どもなのに。」
「恭弥くんから見たら僕なんて釣り合わない身分ですよ?」
「……そんなの構わないよ。」
「じゃあ、僕も同じです。」
今度は僕からも骸からも顔を近づけて唇を重ねた。僕が骸の背中に腕をまわせば、骸も僕を包むように抱きしめた。
ムカつくところも全部ひっくるめて、いつしか僕は骸に恋してたなんて恥ずかしいけど、僕はこれからも骸がずっと好きだ。
「今日は僕が恭弥くんに食べさせてあげますね。」
あーん、と口を開けて骸にご飯を食べさせてもらう。洋食のマナーを学ぶのはまた明日から。
僕の執事
10/5/7
1周年企画
*for 屋敷あみさま