骸雲 | ナノ

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- Driving Too Fast -


※カニバリズム






看護士たちの制止を振り切って、僕は階段を駆け上がった。行く手を阻む者は全て除外。伊達に術士をやっているわけではない。硬い鉄の扉も易々と蹴破って中に突入した。
冷たく静まりかえった、鉄でできたものだらけの簡素な部屋の中央にあるベッドの上に雲雀はいた。手足をで鎖で繋がれ目は虚ろで、雲雀が何を考えているのかは皆目見当がつかなかった。僕は思いっきり雲雀の頬を殴った。青白かった肌は僕が殴ったことにより、気味の悪い色に変色した。
一瞬、瞳に何かが戻ってきたように見えたのを確認し、鎖を引きちぎり雲雀を抱きかかえて廊下の窓を蹴破って外にでた。後ろでたくさんの人間が僕たちを捕まえようと血眼になっていたが知ったこっちゃない。



僕も人間だ。流石にある程度の高さから飛び降りれば足を負傷する。案の定、僕の左足は少し変な方向に曲がり、折れた骨が皮膚を突き破っていた。幸い、雲雀はかすり傷を負った程度であった。
僕は立ち上がり、座り込んだ雲雀の腹に負傷していない右足で蹴りを入れた。あまりの衝撃に雲雀は吐血。そんな雲雀を片腕で抱きかかえ、粉の入った小さなビニール袋を差し出す。雲雀を支えるのに力が入り、左足からは鈍い音とともに血が吹き出した。
ビニール袋を受け取った雲雀は、袋の中に人差し指と親指を突っ込んで粉を指に絡めては自らの鼻にこすりつけて、大きく息を吸い込んだ。それを何度か繰り返すと、雲雀の意識ははっきりとしてきた。


「思い出しましたか?」

「ああ。」


それは良かった、と優しく微笑み雲雀を車の助手席に乗せた。車くらい未成年の僕でも運転できる。片足を負傷したままエンジンをかけた。アクセルを踏み込んで車を急発進させるとエンジンははけたたましい音を上げた。血の匂いが鼻につく。雲雀がせわしなく体を揺らしたので目をやると、どうやらもうあの袋の中身を全て使い切ってしまったらしい。すると雲雀は自分の指を咬みちぎった。さらに自分の腕の筋肉を貪るように食し始めた。


「ごめん、僕、もう限界。」


そう言うと今度は僕の腕に咬みついた。腕がじわりじわりと痛むが、おかげで左足の痛みが薄れていくような気がした。恐らくこのままのスピードで家へ向かっていたら、恐らく家につく頃には僕の片腕は雲雀の胃の中に収まっているだろう。僕はさらに車を加速させた。
帰ったら床下に死んだ人間が何人か転がっているだろう。雲雀が望めばまた僕が人を殺せばいい。それでも雲雀と過ごせるのなら。


とにかく今は速く運転して家に帰らないといけない。じゃないと僕の腕がなくなってしまう。別に彼が人喰い人である運命を呪ったり嘆いたりはしない。僕の愛した人が人喰い人だった、ただそれだけ。



Driving Too Fast





















10/4/5
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