カクとは、腐れ縁みたいな間柄。小中高一緒で卒業して大学が別でも、こうやって都合があったらたまに会ってご飯食べたりしている。昔から一緒で、こうやって気兼ねしなくていい異性の友達がいるって本当にいいなって思う。

「おいしかったー!」
「そうじゃのう。酒覚えてから、ますます食う量が増えたじゃろ?」
「い、言わないでよ」

自覚していることを指摘されて、思わず目を泳がせた。カクはそれに笑いながら、「冗談じゃ」って言う。けれど、私はちょっと拗ねてみせる。

「どーせちょっと丸っこくなりましたよーだ」
「そうか?わしは、久しぶりに会って、女らしい雰囲気になったのうっと思ったんじゃが」
「――…前は、がさつだったって?」

不意打ちで昔から誉められるけど、今更素直に喜べたりできるほど素直でもない。付き合いが長くて、喜ぶのがシャクっていうのもある。
カクは、私の隣で笑っている。それがなんだか、素直に喜べない私の心情を見透かしてるようで、なんだか悔しかった。

「…あ。今日、月がきれいだ」

それを誤魔化すように、空を見上げてそう言った。ほろ酔い状態だから、ちょっと柄にもないこと言った。けど、本当に月がまんまるできれいだった。

「お、本当じゃな」

カクも頷いた。
二人で月を見るために足を止め、見てた。

「あー、もう全然星座わかんないや」
「小学校の頃、習ったのう。確かにもう分からんわい」
「空とか見ないもんね、そんな。あ。あとさー、なんだったっけ。国語でさぁ、『月がきれいですね』は誰だかが、何かを訳したやつだって習ったね」
「…ああ。あったのう」
「なんだったっけ。すっごい本当に、なんでそれだしって思ったし、絶対に使わないよっていう、」
「――のう、」

話の途中で、カクに遮られた。カクを見ようとしたら、カクが被っていた帽子を被せられた。それに、視界を遮られた。

「月が、きれいですね」

いつもと全然違う口調と声音で囁かれた、それ。
視界が遮られた分、余計に一語一語が染みるようで、同時にその言葉がなんの和訳だったかを思い出した。




20110408
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