※学パロ


ばらばらばらっ。なんとなく、机の上にペンケースの中身をぶちまける。ちょっと色褪せたシャーペンや四つ角が丸くなってしまった消しゴム、それから気に入って集めている大量のカラーペンが転がり、何本か床に落ちた。前の席のカクが勢いよく振り返った。

「ど、どうしたんじゃ、いきなり。ご乱心というやつか?」

「え?あ、びっくりした?ごめん」

「いや、別に。ちょっとびっくりしただけじゃ」

「してるじゃん」

わははは、カクが笑う。それから席についたままゆっくり背中を屈め、カクの足元に転がっていたペンを拾い上げる。

「あ、ごめん」

「構わん。それより、随分たくさんじゃの。羨ましいわい」

「カクのノート、黒と赤しかないもんね。まあまずノートとってないけど」

「わははっ、流石のわしでも睡魔にゃ勝てん」

「流石のっていらないでしょ。いつも寝てるんだから」

話しながら、ゆったりゆったりカクの長い指がペンの海を這う。うーん、流石にペンケースの中身の整理しなきゃ。ほぼ使ってないのもあるし。「あ、」そうだ。

「カク、ペンいる?」

「いいんか?」

「うん。使ってないやつ多いし。丁度整理しようと思ってたし。気に入ったのあったら取って。あ、でもお気に入りのはあげらんないよ」

「うーん…、それじゃあお言葉に甘えて。これは?」

そう言って、指先でひょいと掴んだのは、お気に入りのピンクのペン。だめだめ、そう言うと、今度もまたお気に入りの黄緑のペン。だめー、断ると、ちょっと悩んでから青いボールペンを取った。

「これは?」

「あ、うーんそうだなあ…。最近あんまり使ってないし…あー、でも色は気に入ってるしなあ…」

「結局だめなのばかりじゃないか」

「いやいや、カクがいい感じにお気に入りのペンだけ取るからさあ」

「じゃってお前さんがよく使っとるから」

「え、」

「え?」

あれ、今何て言った、この長っ鼻。じゃってお前さんがよく使っとるから、だってお前さんがよく使っとるから、だってお前がよく使っとるから、ぐるぐると頭の中で私が一番よく分かる形に変換していく。
だってお前がよく使ってるから。
はっとして我にかえる。え、嘘、だってカクは私の前の席だし、あれ、それってもしや。そう思って、ふとカクが全く動いてないことに気付く。そーっとカクの顔に目線を遣ると、カクの顔は今まで見たことないくらいに真っ赤だった。

「や、待て、今のは違う!ほら、わし前の席じゃからプリント回す時に見えてからの、いつも同じペンが出とるからきっと性能がいいんじゃと思って!決してお前さんのことが気になるからたまに寝たふりしてちらちら見てるとかじゃ」

赤くなった顔を隠すように必死で口を動かすカクに、私まで顔が熱くなってきた。なんだこれ。てゆうかカクあんたいつの間にそんな高度な技術をっ!「お前さんも気付いてないみたいじゃったからっ、」気付くか!
赤面に加えて非常に恥ずかしくなってきたので、とりあえず1本突き出した。

「あ、あげるっ!」

赤いペン。


きみの心臓なんかいらない

◎たまには純情なカクも…とか思ったんですが思いの外気持ち悪くなってびっくりしましたごめんカク
110322/キリンさんと一緒さま
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