無菌室に存在する重力の可能性




「おーい名前、いい子にしてたか?」
「アッ!チダルマくんーーー!」
「イエーイ!」

少しかがんで、両手を出してくれたチダルマくんに、全力でハイタッチをする。わたしの全体重をかけたハイタッチを受けても、微動だにしないチダルマくんはさすがだ。

「今日は何してたんだ?」
「寝てた!」
「おお!名前はえらいなぁ!」
「えへへ〜」

チダルマくんがわたしのほっぺたをムニムニしてくる。それがまた絶妙な力加減で、10時間以上寝ていたのに、また眠くなってくる。ほっぺたにもツボがあったなんて知らなかったなあ。チダルマくんはきっと一流のマッサージ師になれるだろう。

「煙にイジワルされてないか?」
「されてる〜たすけてチダルマくん〜」
「ナニッ!」
「オレは何もしていな、ギャッ!!??!」
「うわーすごい今のなに?」
「恐怖のイカヅチ〜お仕置きver〜だ」

黒焦げになった煙さんから、プスプスと黒煙が立ち上っている。煙だけに。なんちゃって。

「でも雷なのにピカッってならなかったね」
「こっちの方が名前の目に優しいだろう?」
「チダルマくんやさし〜」
「お前は脆いからな、オレとしても気を使うのだ」
「わたしを貧弱に作ったのチダルマくんじゃーん」
「縛りプレイってやつだ」

チダルマくんはいつでも楽しむことに全力なので、遊びに関していえば、結構なマゾ体質である。"わたし"というお人形に関していうと、修復や複製を禁止したうえで、壊れないように大事にする、という遊びをしているらしい。この前、わたしの腕に擦り傷ができたときなんかは、めちゃくちゃ悔しがって子どもみたいにバタバタしていた。(ついでに八つ当たりで煙さんのキノコ園が砂漠になった)

「チダルマ!この小娘の嘘くらい見抜けるだろう!」
「わかっていないな煙。嘘とわかっていても騙されてやるのが良い男なのだ」
「えー嘘ってばれてたの?」
「本当にいじめられていたら、オレが助けにいかないわけがないだろう」
「チダルマくんかっこいー!」
「クッ、このモンスターめッ!暗殺してやろうか!」
「こわーい」
「おいチダルマ!お前の人形、どんどん邪悪になっていくぞ!」
「名前はかわいいなァ」

わたしはチダルマくんに大事にされるのがお仕事なのだから、煙さんに少しばかり嫌がらせをしたって許されるのだ。飽きられてしまえ、なんて煙さんは言うが、チダルマくんのことをわかっていない。チダルマくんは一度始めたゲームは最後までやり切るタイプだ。つまらなかったとしても、終わったあとに文句を言っておわり。チダルマくんは遊びに対しては世界一誠実な悪魔といっていいだろう。

「わたしが壊れちゃったらさあ、地獄に立派なお墓つくってね。ピラミッドみたいなやつ」
「死ねると思ってるのか?」
「壊れたら死ぬようにできてるんでしょ?」
「フフン!オレは物持ちがいいんだ」
「チダルマくん、几帳面だもんねえ」


(期間限定でもあなたのいちばんでいたい)




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