あたらしい心臓をもらいに




 悪魔は信用ならない。気まぐれだし、嘘つきだし、いい加減で自分勝手だから。

『そしてお前の心も読める。ここで言うと地の文だ。上のやつな。』
「ハルちゃんってさ、表現力に欠けてると思う」
『ナニッ!? 殺してしまった、そして甦れ。』

 悪魔は芸術に向いていない。理由はみっつ。苦しみを知らない。俗っぽい。陳腐。

「ほら」
『私は個性的で独創的、そして貴様の扱いで苦しんでいる、とてもだ!』
「いまさ、同じ殺し方したじゃん、二回連続で。とても陳腐、ちんぷぷぷぷぷー」
『ムムムム、ム、ムーン……』
「いまわたしのパクった?」

 ハルちゃんの顔がグワンと変わる。真っ赤になって怒りを主張してくる。それはもうタコがやってる。使い古された表現。

『お前、今日は生理か?』
「その表現もとってもダサい。人間の手垢まみれ」

 さて仕切り直しまして。まずはわたしのボロボロになったお洋服を素敵に戻してくれますか。ありがとう。さっきと違う死に方だったけど、爆発オチは最も基本的、スタンダードで王道的なダサい殺し方だとおもう。チダルマさまだったら絶対しないよ。

『私はチダルマよりも先進的だからだ!』
「具体的には?」
『お前がチンチクリンのクソアマだと理解している。チダルマの醜悪なペットめ。』
「あら」

 ハルちゃんがわたしの髪、目、指先を指し示すたびに、赤い小さな矢印がペタリとくっつく。タトゥーにしてはチープで、ステッカーというには毒々しさが隠せていない。

「言葉で教えて、ハルちゃんは詩をつくる悪魔でしょ」
『気色悪いなお前。』
「ねえってばー」
『感電した猫みたいな女めッ!』
「ふふふ」

 それ、前にチダルマさまにも言われた。可愛いって思ってくれてるってことなんでしょ。感電した猫にキスしたがるその感性は悪魔みんなに共通なのかな。猫の死体じゃダメなの? 窒息した猫もだめ? じゃあ感電した犬は?
 ビビビビビ、と強い電流がわたしの体を勝手に動かす。ずっと痛くて、ずっと生きたまま、ハルちゃんの足元から彼女の大きな身体を仰ぎ見る。

「えっちってこと?」
『今ならキスしてやってもいい。』

 にんまりと笑うハルちゃんはやっぱり陳腐だ。それ、ダストンのセリフと被ってるよ。


(みんなキュートでファンタスティックで狂ったレコードみたいだね)




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