私たちは神さまを愛している




「神様っていっぱいいるんだね」

「まあ厳密に言えばサーヴァントは神様ではないけれど、」

「先輩の神様には会えないのかな」

「立香くん?」

むかしの俺は神様って存在を信じていなくて、その結果として、だいすきだった女の子を傷つけた。神様はいるんだよって寂しそうに呟いた彼女の言葉は正しかったのだ。それを今の今まで、俺は理解できなかった。
彼女が信じていた神様に会いたいと思った。僕より上手に彼女を愛せていただろう神様に。彼女を愛している誰かと、彼女の美しさについて話をしたかった。

「名前先輩、せんぱいはなんでいま生きていないんだろう」

先輩はいつも祈っていた。守ってもらっている、と誰かに感謝をしていた。神秘なんてものがみんな消えて、忘れ去られてしまっていた、あの世界で、彼女はなぜ神様を愛することができていたのだろうか。

「先輩の神様は先輩のこと、守れなかったけどさ先輩は、じんるいといっしょに、死んじゃったけどさ」

俺がちょっとがんばれば、もしかしたら、先輩をまた、日常に戻せるかもしれないんだって。先輩が神様にお祈りをして、それ俺がうしろで見ていてさ、もう二度と先輩の神様を否定したりなんかしないから、俺のこの気持ちも、否定しないで、受け取ってほしいんだ。お返しをほしがったりなんてしないから。そんな日常が俺の望み。俺の希望。

名前先輩、いってたよね、「わたしの神様を笑わないで」って。
いまならその願いが、俺にも正しく理解できる。

「俺の神さまはたぶん、名前先輩なんだよ」


(だから愛してなんていう資格は俺にはないけれど)




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