花びら舞う日のカーテンコール




好きな女の子がいる。いつもニコニコと笑っていて、いつでも俺の言うことを肯定してくれて、明るくて、小さくて、貧弱な、可愛らしい女の子。
名前は俺の言うことならなんでも頷いた。健気に後ろをついてきていた。弾む声で俺の名前を呼ぶその声には、確かに恋心があったはずだ。

「俺は、名前を信じてるぞ」
「ありがとうございます!アメリカさんなら理解してくださると思っていました!」

名前は俺のことを愛してくれている。世界でいちばん強い国を愛している。自分のことを庇護してくれる強者を愛している。自分に利益をもたらしてくれる存在に愛されるために、何を差し出すこともためらわない。
俺以外に笑顔を向けて、その場その場でいちばん強い国に熱い眼差しを向ける、愛すべきコウモリ野郎!君は本当に愚かだ。プライドってものがないのだろう。何よりも、利益を最大化するためのロジックを理解していない。

「名前、俺は考えたんだ」
「はい!」
「永遠のものってあると思うかい?」

名前はキョトンとした顔を晒したあと、満面の笑顔でアメリカさんは永遠だとおもいます!と抱きついてきた。

「もちろんさ!でも、名前はいつまで在るのかな」
「えっアメリカさんとずっとお供したいですけど」
「国として?」
「……アメリカさん?」

国家の存続は簡単ではない。どれだけ栄えていても、どれだけの歴史があっても、あっけなく消えていく。だからこそ、俺たちは俺たちのために、どんなことでもしなくちゃいけない。だから、俺のことを愛している彼女が、他の国にも笑顔を向けなくちゃいけないのも、仕方がない。

「国であることにこだわる必要、あるかい?」
「だって、え、でも」
「俺以外のやつに、媚び諂う名前は見ていられないんだ」

名前は世界でいちばん強い国を愛している。だから、彼女の俺への愛情は、未来永劫ゆらぐことはないだろう。けれど、どんなにわずかな時間でも、どんなにわずかな分野ででも、彼女が俺以外に恋をすることを強制されることは許されない。

「一緒に生きよう。俺だけを頼って、俺だけを見て、俺だけに恋をすればいい」
「わたしは国ですよ、恋なんてそんな」
「君はただの女の子になってもいいんだ。俺が手伝ってあげるから」

ふるえる名前の肩を引き寄せて、その小さな背中に腕をまわす。自分の胸に押し込み、飲み込み、ひとつになって、ようやく俺たちの愛は永遠のものになったのだった。


(アメリカンドリームのハッピーエンドのフェアリーテイル!)




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