ただしいよりもたのしいがいい




「あっアイスがある」

フロイドがどこ?と言いつつ、わたしの頭を雑に掴む。わたしは素直に指で示す。顔を上げると、フロイドと目があった。

「買ったげる」
「ここは観光地ですよ」
「で?」

わたしの情けない表情に気づいたのか、ジェイドが楽しそうに笑っている。笑えないんですけど?

「フロイド〜いいよ〜」
「アズールなんか気にしなくてもいいって」
「同じ金額でもっと質の良いものが買えると言ってるんです」
「アズール〜いいよ〜」

観光地のアイスを買うくらいのお小遣いはわたしも貰っている。でもアズールが言いたいのはそういうことじゃないだろう。それに、わたしはアイスがどうしても食べたいってわけじゃないが、フロイドはそんなことは問題にしてくれないだろう。ついでに言えば、今回のような件においてジェイドは頼らない方がいいと経験が教えてくれている。論外だ。

「名前ちゃんが欲しがってんだけど?」
「名前さんはもっと質の良いアイスの方が良いですよね?」
「あーもーうっぜえな……」

一触即発な雰囲気に、思わずフロイドの服の裾を引っ張ってしまう。それが良くなかったらしい。アイス屋さんのこともそうだが、思いつきでなんでもするのはやめるべきだ。

「名前ちゃんはオレと来たいみたいだから、後でねアズール?」
「えっ」
「やれやれ、あなたにはもっと賢い立ち振る舞いを期待していたのですが」
「えっ」
「可哀想なアズール……」
「かわいそ〜」

ニコニコのフロイドとジェイドが、震える指先で眼鏡を抑えるアズールに追い討ちをかける。なんでそうやっていちいち言動がいじめっ子なの二人とも?

「な、泣かないでアズール?アイス一緒に食べよ?」
「アイスなんて脂質の塊ですよ」
「名前ちゃんおいで〜、味えらぼ?」

フロイドがわたしの腰をつかんで、ひょいと持ち上げる。わたしがアズールと手を繋いだままなんてことは、フロイドは気にしてくれないのでそのまま運ばれる。

「アズールはジェイドに買ってもらってね」
「このくらい自分で買います」
「わたしも自分で買うよ!」
「名前ちゃんのはオレが買うって決めたからダメ〜」
「無駄遣いはフロイドに任せておくべきです。体よく使ってやりなさい」
「あははは、甲斐性なしのアズールは黙ってろよ」
「うっ……うっ……」

アイスを口に押しつけられながら冷や汗をかくわたしに、ジェイドが声をかけてくる。勝手に写真取らないでもらえます?

「名前さんは僕にだけ厳しいですねえ」
「あたりまえです」
「懐かれているのは悪い気がしません」
「警戒してるんです!」
「それにしては隙だらけのようですが」

ジェイドのすまし顔が、わたしの顔から離れていく。フロイドとアズールはたぶん気付いていない。もしバレていたのなら今頃大騒ぎだ。

「顔が赤いですね、アイスが足りないのでは?」
「うるさいです!」


(わたしのために争わないで、切実に)




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