これは傷ですだから何です
最初はわたしもフロイドも、楽しく遊んでいた。でも、悲しきかな、わたしたちの体力や体格の差は誰がみても明らかだ。そしてフロイドは気分屋さんのやりすぎ屋さん。ようはじゃれつくだけの遊びがエスカレートした。
「っいたい!」
「いたくしてない」
「痛いもん」
「じゃあもういい」
わたしの肩から口を離したフロイドは、ムッとした表情で、さっさとベッドから起き上がって部屋から出て行こうとする。まあそれはどうでもいいが、フロイドの機嫌を悪くさせたとバレたらあとでわたしが怒られる。
「フ〜ロイドく〜ん」
「なに」
「ゲームしよう」
「しない」
「ルールはねえ」
「しないつってんだろ」
顔をぐっと近づけて威圧してくるフロイドは、もう立派なギャングだ。かわいいのでちゅーしてあげましょう。フロイドの首をつかんで、歯を舐めてあげると、きょとんとしたフロイドがこちらを見下ろしてくる。
「相手の舌噛んだ方が負けね」
「おっけ〜」
ころっと笑顔に戻ったフロイドがわたしの舌に噛み付いたのは10秒後だった。
「よっっっっわ!!!!アハハハハ!!!!」
「噛んでないし」
「しっかり血ィでてます〜」
「ごめんね?」
「いいよ」
なーんですぐわたしに噛み付くのかなあ、という疑問を何気なく口にすると、フロイドはでもでもだってで言い訳をしてくる。噛むと美味しい味がする〜って、チューインガムでも噛んでな。
「い〜じゃん甘噛みくらい、なんでおこんの?」
「いや痛いんだよ」
「かわいい愛情表現じゃん」
名前おねえちゃん〜とベタベタされると、フロイドのぶりっ子だとはわかってはいても悪い気はしない。かわいこぶっちゃって、も〜、誰に似たんだか。
(ジェイドと試合をしたら長期戦のち引き分けになった)
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