残るのはどうせ美しさだけ




「わたしも能井さんの先輩になりたい」
「おー勝手にがんばれ」
「死んでくださいよ〜!バカ〜!」
「能井ィ!なんとかなんねェのかこれ!」

能井さんを無遠慮に呼びつけるこんな暴力男が、能井さんのパートナーだなんて信じたくない。こんなひどい話があってもいいのだろうか?台所から持ってきた包丁は、暴力男の攻撃によりバラバラになってしまった。もはやわたしにできる事は、社会的制裁だけだ。

「シャイターンは今後、煙ファミリーと敵対します」
「おい心、一回くらい死んでやったらどうだ」
「ハァ!?」
「そうだそうだ!煙くんはわかってんじゃん」

シャイターンが煙ファミリーと敵対してつぶれようがくたばろうがどうでもいいけど、その前にこの男を亡き者にしなくちゃあ気がすまない。暴力男がうろたえる様を見て高笑いをしていると、心なしかシュンとした能井さんがわたしに声をかける。

「名前〜あんまり先輩を嫌わないでくれよ」
「ウ”ッッッ、だって、だって〜〜〜!!!」

こんな野蛮でおっきくて、喧嘩以外のことが脳味噌の中に詰まってなさそうな男だとは思わなかったんだもん!能井さんにはもっといいひとがいるよ!王子様か、お姫様みたいなひとが!わたしがいいなんてワガママは言わないけど、こんな暴力男はいやだよ!

「あんまりじゃないですか!ひどいよ!死んでよ!」
「確かに先輩は暴力男だ!でも、それはオレだって同じだぜ、名前」
「おーいってやれ能井、俺への悪口ぜんぶお前にもふっかかってるぞって!」
「能井さんは暴力的でもいいの!格好いいから!」
「そ、そうか……」
「そうです!格好いいひとなら何しても許されるって悪魔も言ってました!むしろ積極的に悪事をどんどんこなしていくべきです!背徳的でとても良いとおもいます!わたしはついていきます!能井さん!」

なんかすげ〜褒められちゃったな、とテレテレしている能井さんを見ていると、暴力男のせいで荒んだ心も少しだけ落ち着いていく。は〜どうしてこんなに能井さんって美しいのだろうか。能井さんのパートナーになっていいのは銀髪赤目か金髪碧眼のベビーフェイスの人間だけだから。わたしの言葉に、気まずげにマスクをかぶりなおした暴力男を、何か言いたげな煙くんが肘でつついている。

「ん?ん〜〜〜?暴力男、あなたまさか……」
「先輩がマスクちゃんとかぶるの珍しいですね」
「シャイターンのお偉いさんの前でマスク逆向きはダメだろ」
「よい心がけです、煙の掃除屋」

でもわたしは今日、シャイターンとしてじゃなくて、能井さんのお友達として遊びにきてるのがわからないのかしら!?嫌味だわ!嫌味な男だわ!能井さんの先輩面してくる!

「うえ〜ん、能井さん〜〜〜!いじめっ子なんか捨てて殺しちゃいましょうよぉ〜〜〜」
「名前をいじめる奴ならオレが全員殺してやるから、先輩は多めにみてくれよ、な」
「……はい!多めにみます!」

ハーすてき、素敵だわ能井さんって。そう思わない?と噂のアリスに手紙を送ったら、赤眼は好みじゃないとかえってきた。能井さんの瞳の美しさが理解できない生き物ってかわいそうだ。


(心の顔面みて泡食って倒れる名前ちゃん「ナナナナ、ナ、アリ!!!」)




感想はこちら



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -