嫌いになるのは明日にして




「わあボロボロ。絆創膏いる?」
「いらん」

ついてこいと簡単に言うけれど、今は夜中だ。深夜の外出は危ない。とくにわたしたちみたいにか弱い女子どもは、おうちにいるべき時間だと思う。

「その危ない魔法使いの前で言うセリフじゃねェな」
「シンちゃんが強盗人殺しなんてできるわけないって、わたし、信じてるよ!」
「いや普通に事実だよ、現実みろ」
「えー証拠は?」
「なんかめんどくさくなってきたな……」
「い”っっっ」

世界一の石頭から頭突きをうけて、視界がグラグラする。ふらふらする視界の中で、シンの顔がわたしの顔に近づく。こんな野蛮なキスの仕方ある!?とおもったらシンの顔が下にそれる。大きく口を開けたシンが、わたしの肩に噛み付いた。

「い”だだだだ!!!!」
「うっへえ」

肩に噛み付いたままで、わたしを引きずって歩きだすシンはいよいよ頭がおかしくなってしまったのかもしれない。幼児退行?というかもう人間じゃなくない?獣だよ!!!!ケダモノ!!!!バランスを崩してしまったために、自分の全体重が痛みとして肩に伝わってくるのが死ぬほど痛い。

「あるく!自分で歩くから!」
「じゃあさっさと来い」
「いたい……いたい……」
「舐めとけ」

しくしくと泣き声をあげる哀れな女の子に、振り返りもしないクソ野郎に、嘘泣きじゃない涙がでてきた。いっておくけど、たぶんこれ、わたしの人生でいちばんおっきい怪我だよ!!!!!獣に噛まれて血がでてるんだよ!!!!じんじんしてるし、バイキンはいってるかもしれないし!

「いたい……」
「あーもーわるかったって、とりあえずさっさとこっちこい」
「あいあい……」

扉のドアノブまで口で開けようとするシンに、手の使い方わすれちゃったの?と心配して聞くと、お前はクソほど観察力がねえな。と侮辱されたので二度と心配してやらない。扉は開けてあげた。

「うっし、これで一息つけるな。せーせーしたぜ」
「なにか終わったの?」
「お前の誘拐」
「へえ?きれいな場所だねここ」


(えっっっかえれないの!?)




感想はこちら



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -