勘違いしてくれればよかったのに




ワードパレット
・リボルバー ・愛想笑い ・リセットボタン

「なんでわらってるの?」
「きみが好きだから」
「愛想笑いでしょ」
「どうして?」
「えくぼがない、ほら」

ビリーのつるつるのほっぺたに、指を伸ばす。目と口はやさしいアーチを描いているけれど、彼のこの笑顔はきっと本心からのものじゃあない。そのことに悲しいとは思わない。心のそこから笑うのは、わたし以外の前ですればいい。

「名前、わらって」
「いいよ」
「えくぼ、できてるよ」
「えっうそ」

人生観がひっくりかえってしまった。つくり笑いでもえくぼってできるんだ。あーあ、最後の最後にかなしい真実を知ってしまった。

「もう一個、真実を教えてあげようか」
「うん」
「僕の銃はリボルバーじゃない」
「へえ、じゃあなに?ピストル?」

わたしの質問に、楽しそうに笑うビリーは答えを教えてくれない。銃の区別なんてつかないよ。あんまり笑うのはやめてくれないかなあ。ビリーはひととおり笑ったあとに「君はそれでいいよ」なんて言って、いいかんじで話が終わったが、たぶん説明が面倒くさかっただけだ。そんなに興味もないし別にいいけどさ。

「ビリーはさあ、やり直したいと思わないの?」
「何をさ」
「いろんなこと」
「君だって、そんなこと思ってないだろうに」

銃の引き金はリセットボタンじゃない。銃は銃だ。本体とデータの完全な破壊。再スタートをするためには、いつくるかもわからない審判の日まで待つ必要がある。

「厳しいこというね」
「うーん、安心させるつもりだったんだけど」
「そうなの?ありがとう」
「じゃあね」

あなたが愛した銃で死ねた。それだけで、わたしの人生には意味があったのだと思えるよ。


(君は本当に僕に興味がなかったんだね)




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