笑いばなしにしようとするな




ワードパレット
・どこか遠い国 ・心中 ・懐かしい

しらない場所に行くのはすきだ。冒険はたのしい。でも、それは、帰ってこれるとわかっているからだ。キバナくんに自慢できるのがうれしいのだ。

「うーーーん、それで心中かぁ」
「あいしてるなら死んで」
「ナイフで死ぬのは痛いぞ〜?」
「あなたに会えないなんて耐えられるはずもないわ」
「ドラマのセリフの引用は一旦やめようか!な?」

ドラマじゃなくて小説だよ、というと、むずかしいのを読んでるな、と難しい顔で褒められた。そうなんだよ、わたしは大人の本を読む、立派な大人なので、親の引っ越しに付き合うどうりなんてないのだ。引っ越しするなら勝手にすればいいんだ。わたしはキバナくんと一緒にナックルシティにいるもん。遠い国になんて行きたくない。

「毎日電話してやるからさ、心配することなんてねえって」
「遠くの恋人より近くの愛人なんでしょ!やだ!」
「なァ、その本読むのやめようぜ?」
「今のはテレビ」

キバナくんが、今度面白い本とか送るからそれを読んでくれとか、関係のない話ばかりする。話そらさないでくれない!?引用元なんてどうでもいいじゃん!離れなきゃいけないんだよ、1週間でも、1ヶ月でもないんだよ。いつ戻ってこれるか、いつまた会えるかわかんないんだよ。

「名前は、10年20年でおれサマのこと忘れるつもりなのか?」
「にじゅうねん!?」
「おれサマが今まで何年待ってると思ってんだよ、心配しなきゃなのはコッチの方だぜ?それを大人として余裕を見せてやってんだろ?」
「うそだ、キバナくんだって、20年も待てるはずないよ」
「ふーん、じゃあ心中すっか」

ようやくわかってくれたか、と家からもってきた包丁を渡そうとして、必要ないと断られる。立ち上がったキバナくんが、わたしの口元に手のひらをぺたり、とくっつける。なんかわたしの知ってる心中とちがうな......と思いつつ、キバナくんの顔を見上げると、おれサマもあとでちゃんと死ぬから、と笑顔で言われたのでまあいいかな、とおもっていられたのは30秒くらいだった。

「........ッゲホ、ぅ”えっ、っ、」
「やっぱり悲しくなってきたから、痛いと思うけどナイフでやるか」
「やっっ、やだ、っ」
「そうだよな〜! 死んだら終わりだもんな! 会えなくなるのも、ちがう男を好きになるのも悲しいが、名前が死んじまうのがいちばん悲しいぜ、おれサマは」

名前がおれサマのことを忘れても、思い出させにいくから、心配しなくていい。そういってニッコリと笑顔を見せるキバナくんが、わたしの涙をぬぐった


(なんてこともあったよな!隣町だから結局週5で会ってたっていうな!)




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