最後には愛されてあげる




「わーかわいー」
「そうか、買ってやろう」
「え?」

わたしの真後ろに立っていた男の人が店員さんを呼び、カードを出し、サインをする。ここまでだいたい2分くらいだった。いやわかるよ、衝動買いってあるよね。でも奇遇だね、わたしもそれいま欲しいなあってみてたんだよね。まあ購入できるだけの貯金はないんだけど。

「ほら」
「エッッッわたし!?」
「おまえ以外に誰がいるんだ」

じゃあまたな、とわたしの頭を軽くなでて、ひとりでどこかに行ってしまったお兄さんを呆然と見送る。というかあれ煙じゃない?はじめて見たっていうか......いまの何?貧民への施し?
......いい金持ちじゃん煙!ゴシップみてゲラゲラわらうのはもうやめるね!

そのあとも何度かそういうことがあり、わたしの方もだんだんと察してきた。友人と一緒にいるときも、わたしにだけプレゼントしてくれたし、周囲の魔法使いはみんな煙のことをクソ金持ち野郎といっているし。

「煙さん.......わたしに惚れたんですね?結婚してもいいですよ」
「するわけねェだろ」
「いいんですよ照れなくても、これだけ貢いでくれる男なら結婚もやぶさかではありません」

美人に生まれてよかったなあ!これでわたしもリッチメンの仲間入りってやつよ!好きなものを食べ、好きなものを着て、権力を振りかざして生きていくぞ〜!

「金は返してもらうぞ」
「ん?」
「8605820Nだ」
「え?」
「利子はつけてねェから安心しろ、100%お前の欲望と怠惰の金額だ」
「はっぴゃく......?」
「8605820N」

わたしは現在無職だ。煙さんがご飯もお部屋も用意してくれるので、わりと最悪な態度で辞めてきた前の職場は月給が8万N。ははーん、さてはこの男、わたしがあまりに上流階級っぽい雰囲気の女だから、そのことに気づいていないな?

「申し訳ないけど、返せません、ごめんなさいね」
「なんでそんな嬉しそうなんだ」
「いやマジで無理ですよ、死ぬまでケムリだしても無理です、諦めてください」
「お前のゴミみたいな魔法に期待はしてない」

なんかさー煙さんってえらそうだよね。煙さんの魔法って変化系なんでしょ?ちょーーーーありふれてるやつじゃん!自分だって似たようなもんでしょ!しらんけど!

「じゃ〜どうしろってんですか」
「ウチで働いて返せ」

あーーーもう最悪だよ。労働せずにしばらく暮らしていたから、もう今後二度と労働できない体になってるんだよこっちは。わかってくれないかなあ!?800万も働くって何十年分だよ。

「煙さんなしじゃもう暮らせないです.......責任とってください......」
「まァ......オレの近くにいられる仕事だ、心配すんな」
「はたらきたくないよぉ.......」
「お前、オレをおちょくってるのか?」

煙さんなんか情緒不安定じゃない?優しい顔から一転して、なんだか不機嫌そうだ。あれこれと新しい職場のルールを話す煙さんの細かい注意事項が多すぎて集中できない。聞き流してるわけじゃないです、きいてます、ボス。

「オレの部屋から出たら職務怠慢で給料は出さんからな」
「結局なに?部屋にいるだけ?」
「敬語を使え」
「いるだけでございますか?」
「あぁ」

なんかこれってあれじゃない?

「ボス、やっぱりわたしに惚れてるでしょ」
「そういうのをすぐ口に出すからテメェは貧乏人なんだ」
「ちゅーするから借金200万くらい減らして?」
「..............まあ」
「えっやだよ、冗談です、パワハラです」
「クソ女め......」

やさしくしてくれないと死にますからね!いいんですかほら、あんたの大事な女の命はこっちが握ってんだぜ!!!

(借金は1年で5倍になった)




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