いちばんとか知らない





リフティとシフティは仲が良い。年がら年中喧嘩こそしているものの、それは片時も離れずに一緒にいるということでもある。あと仲が悪い双子はペアルックをしたり、歯ブラシを共有したり、恋人を共有したりしないとおもう。

「いや共有はしてねェよ、なあシフティ」
「お前まで肯定してたら殺してたとこだぜ、リフティ」

全く同じ顔でわたしをバカにしてくる二人は生き生きとしている。わたしとランピーがどちらがバカかという、非常に侮辱的な話題でゲラゲラ笑っている、のはまあいい。それがどうでもよくなるほど、いやな予感で逃げたくなってきた。

「あーそうだねーごめんねー」
「おいまて」
「おいクソビッチ、そのかんじ、お前ほかに男いるな?」
「性病もらってきてねえだろうな」
「二人と一緒にしないで!!!」

女の子のパンツを二人がかりでずり下ろそうとしてくるクソ野郎共に抵抗しつつ、とりあえずポケットの中の財布Bを遠くに放り投げてことなきをえる。人の財布の中身を仲良く分け合っている双子は、物欲も独占欲も人一倍に強い。そのくせ一緒になって悪事をするのは、二人とも病的にポジティブで自信家だからだ。つまりはお互いがお互いに都合が良い勘違いをして、そのことにギリギリまで気づかない、お互いに。
だからまあ、今回の話題もいつものアレだと思って、二人が殺し合いをするのはめんど、かわいそうだなあ、というわたしの思いやりで流してあげようとしたのだ。けれどそれもここまでだ。

「じゃあ聞くけど、わたしはどっちに操を立てればいいわけ?」
「み?」
「難しい言葉使うな!わかんないだろ!リフティが!」
「そうだ!話についてけてねェだろ!シフティが!」
「......わたしの恋人は誰だと思ってんの、二人は?」
『俺』

びっくりして顔を見合わせた双子が、ギャーギャーと言い合いをしている。俺のがいっぱい手をつないでるとか、俺はなにしたとか、なに言われたとか......いやそもそも、告白のとき含めて、ずっとわたしたち三人でいたよね?どう解釈していたの?なんでそんな勘違いができるの?

「貸してやってるだけに決まってんだろ!」
「貸してもらってるくせに図々しいなテメエ!」
「アッハッハ!ころしあえ〜!」
「おいビッチ!!!!」
「テメエから殺すぞ!!!!」

共通の敵をつくった双子は強い。余計なことを言ってしまったと後悔する間も無く、仲良くわたしを口汚く罵ってくる二人に、わたしもだんだんムカついてきた。

「そもそも、決めろって言われても二人の区別つかないから。帽子以外のアイデンティティないからね二人とも」
「イケメンだろ俺の方が、なあシフティ」
「お前鏡みたことないのか、リフティ?」
「年中鏡みてるようなもんでしょ二人とも」
『見る目がねェなア〜〜〜.......』

やれやれ、と肩をすくめる双子は首を振るリズムまで一緒だ。こんな難易度のクイズを間違えてバカ扱いされたくない。お前らは自分と相方の財布の区別もついてないだろ!中身違うのに!

「中身が多い方が俺のに決まってんだろ、バカか?」
「ハ?お前、いますぐ財布の中身みせろ」
「.......テメエのが多いじゃねえか返せ!」
「こっちが俺のだふざけんなよ!」

二人がポケットから出した財布は合計で7つある。そのうち1個がわたしの、3個がランピーの、2個がヒーローの、1個が双子のだ。しばらくもみ合ったあとに自分たちの本来の財布の1個がなくなっていることに気づき、急いで探しに出て行った双子にため息をついて、わたしは自分への慰めもこめて美味しいものを食べることにした。

「あら、豪勢ね」
「彼氏のおごりだから」
「大事よね〜」


(手癖が悪いのはお互いさま)




感想はこちら



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -