二人きりの約束




ギグルスからお花をプレゼントしてもらって、綺麗なお花を髪に挿して家まで帰ると、何を勘違いしたのか、ランピーがわっと顔を覆った。

「......うわきだ、」

「浮気じゃないよ〜泣かないで?」

机に突っ伏して、ぐすぐすと鼻をならすランピーの頭に手を伸ばす。
ランピーの頭に手を置いた瞬間、バッとランピーの両手がわたしの手を押さえた。うーん、なんて間抜けな格好なんだろう。

「ランピーくーん?」

「へへ、名前ちゃんのてのひらゲット」

「あっないてない!すぐ嘘泣きするんだから」

「オレしらな〜い」

顔をあげたランピーの目はいつも通りで、さっきまでの泣き声は作り物だったとわかる。嘘泣きばっかりするランピーは、嘘泣きと同じくらいの頻度で本気で泣きだすので、泣き声を出されるたびに、わたしは毎回慰めている。いつも引っかかってるから嘘泣きをやめないんだと言われたら反論できないのだけれど、本気で泣いてるかもしれないと思うとほおっておけないのである。

「カワイイお顔してもだめです、わたしも怒りますよ」

「おこられるとどうなるの?」

「え?うーんと、えーと、外出禁止!」

「じゃあ名前ちゃんもカワイイから外出禁止ね」

「なんでそうなるの〜!こら!人の手のひらであそばない!」

「みてみて、ヘリコプター」

わたしの手を使って勝手に手遊びを始めたランピーがニコニコ笑ってるので、まぁ大人しく遊んでいるなら別にいいかな、と一瞬考えて、いやいや甘やかすのはよくない、と意識して怒った顔をする。

「ランピー」

「はい、ちゅー」

「んん!??!」

脈絡も何もなく、いきなりランピーの顔が迫ってきて、驚くわたしの目の前で、ランピーが嬉しそうに笑う。

「名前ちゃんがちゅーねだってきた〜!カワイイね?」

「いやねだってないし!」

「でも今えっちな顔してたよ」

「しーてーなーいー!」

ランピーが変なことを言ってくるので顔が勝手に熱くなる。急いで離れようとすると、わたしの腰にランピーの長い腕が伸びてきて、体勢が崩れる。

「もー!はなして!」

「二人きりでおうちにいるって約束したでしょ」

「してません!」

「オレも名前ちゃんも外出禁止だよぉ、誰にも会わないで、ずーっとふたりで一緒にいよ?」

外出禁止ってそういうのじゃなくない?と言ってやろうと口を開くと、ランピーの舌が伸びてくる。軽く舌を噛んでやると、お礼とばかりに唇を甘噛みされる。

「うーやだって、やめてよ、」

「いやじゃないよ」

「んん、むり、口はなして、」

「むりじゃない」

無理っていってるじゃん!ランピーから離れようとするも、力の差がありすぎて、むしろどんどん距離が詰められていく。体と体の間の隙間がなくなって、ぴったりと肌がくっつく。

「も〜悪い子だね」

「へへ、じゃあずっと外出禁止だね?」

嬉しそうな顔しちゃってまあ。まあ泣かれるよりはいいかな、と思ってしまったわたしはランピーには勝てそうにない。


(家のドアと窓をランピーが必要以上に厳重に塞いだので仲良く餓死した)




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