あなたのために子どもだった




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『明日はどこに行こうか』『もう会えないかもしれないと思った』
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フェリシアーノくんは不思議な人だ。外国人らしい顔立ちに、明るい色の髪と瞳。それでも、とっつきにくい印象はない。コロコロ変わる表情に、謎のオノマトペと、ゆらゆらと揺れる肩や腕に、敵意を感じるほうが難しい。

「名前ちゃ〜ん!チャオ〜!」

「ちゃお〜〜〜」

「ハグハグ!」

「はいぎゅー」

最初のころこそ、イケメン外国人とスキンシップをとることに照れていたけれど、フェリシアーノくんの邪気のない笑顔を見ていたら、そんな恥ずかしさはすっかり浄化されてしまった。わたしのほうが年下のはずなんだけど、気分はお姉さんである。

「いまから学校?」

「そうなんだよ〜」

「今日は金曜日だね!明日はお休みだね!ね!」

「あそぶ?」

「やったぁ〜!」

くるくるとその場で回り出すフェリシアーノくんの腕にひかれて、わたしもくるくるまわる。くるくるくるくるくる......

「まって酔う」

「yo?」

「頭がくるくるする」

「名前ちゃんのしゃべりかたってかわいいよね」

「フェリシアーノくん専用だよ」

日本人相手にはもっとシャンとした喋り方してるもん。......してるよね?できてるよね?

「そっかぁ、名前ちゃんはいつでもキラキラしてるから、俺もおかしいと思ってたんだよ」

「キラキラ?あざーっす」

「恥ずかしがってヘンテコな言葉つかうとこもベッリーナ!」

「恥ずかしくないやい」

カワイイカワイイ攻撃をかわしつつ、学校に近づいていくと、ふと遠目に佐倉くんが見える。
フェリシアーノくんと兄妹みたいにベッタリとくっついているのが、急に恥ずかしく思えて、少しだけ距離をとろうとして、即座につめられる。同じことを三度繰り返してから、フェリシアーノくんの肩をたたく。

「ないしょばなし」

「了解であります!」

「もうちょっと離れて歩こう?」

「名前ちゃんが転びそうになったら俺が支えてあげるから大丈夫だよ」

「いやその、そうじゃなくて、ほら、」

なんて言えばいいのかなあ、と頭をひねっていると、真面目な表情をしているフェリシアーノくんと、唐突に目があう。

「ねえ、なにも問題ないよね?」

「えっと」

うなずこうとして、佐倉くんの顔が脳裏に浮かぶ。自分でも理由がわからないまま、でも恥ずかしい、と言おうとする前に、フェリシアーノくんが立ち止まった。

「......やっぱり」

フェリシアーノくんの視線はわたしの肩を超え、佐倉くんの背中をみつめている。

「やっぱり、名前ちゃんは騙されてくれないんだね」

「フェリシアーノくん......?」

「ねえ、優しいだけじゃだめだった?俺の隣じゃだめだったの?」

「いやその、気恥ずかしいな〜ってだけで、」

「......そっかぁ」

ふんにゃり、と柔らかく笑いかけられてほっとする。フェリシアーノくんと喧嘩がしたかったわけではないのだ。ただ、なんとなく、ひっかかっただけで。

「うん、名前ちゃんは、まだ気づいてないんだね」

「?なにを、」

「これ以上続けたら俺が負けちゃう......それはいやだなぁ」

「フェリシアーノく、」

「名前ちゃん」

いつもどおりの笑顔で、それでもなぜか、フェリシアーノくんの声は泣いているように聞こえた。

「明日、迎えにいくね」

「......うん」

なんとなくだけれど。
なんとなく、これが最後な気がした。これが優しいフェリシアーノくんとの最後の会話だと。お別れをしたわけではないのに。さよならの一言もないけれど、でも、きっともう、わたしが知っているフェリシアーノくんは、二度とわたしの前には現れない。そんな予感がした。

フェリシアーノくんが積み上げていた積み木を、わたしが倒してしまったような、どうしようもない罪悪感があった。ごめんなさいを言おうとして、でも、何に対して言えばいいのかわからずに、そのままフェリシアーノくんを見送った。


(「名前ちゃん」「今日からは、俺のこと、イタリアって呼んでね」「ごめんね」)




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