痛みは今だけ祝福




※戦争ネタがあります。雰囲気だけですが注意


「ぷーちゃん!」

「あ"ぁあ?なんだテメェ、スペインとこのガキか」

「怪我してるの?」

「ほっとけ。テメェの服に血がついたら、スペインに俺が殺される」

ぜえぜえと肩で息をするプロイセンは、今にも死にそうな表情で、しっしっと手を振ってくる。

「わたし、子分やめてきたの。だから、もうお洋服汚しても怒られないんだよ」

「はっ、やめとけやめとけ。あいつの腕の外の世界は優しくはねぇぞ」

「優しくなくても、自由ならそれでいいの」

「どうせすぐスペインに捕まって元の生活に逆戻りだ。さっさと帰って謝って来な」

「元に戻る前に、なにかできればいいの。わたしはなにかを残したい」

「それで死にかけてる男に手を伸ばすたぁ難儀な女だな」

わたしの精一杯の宣言も、一笑される。でも仕方ない。わたしは今まで、一度も戦ってこなかったのだから。だからこそ、プロイセンに憧れて、ここまで走って来た。

「ぷーちゃん、むかし、自分が世界一強い男だって、わたしに教えてくれたから」

「ま、まぁ俺様を選んだってなら見る目があるけどよぅ」

「ぷーちゃん、おねがい、一緒に戦わせて」

「戦うってよ、お前に何ができんだよ」

「親分、わたしのこと、すごく大事にしてくれてた。ううん、今もきっとそう」

スペインと戦争するなら、わたしは切り札になるよ。そう言ったら、プロイセンはニヤリと笑みを浮かべた。
カードの切り方は、プロイセンに任せる。やれといわれたことは、なんでもする。どうせ消えるのなら、派手に消えたい。

「なら、まずはそうだな、どうせ戦場に出れないなら、ここで腕一本切り落とすか。スペインの変態なら、腕だけでお前だってわかるだろ。送りつけてやれ」

「ぷーちゃん、切ってくれる?」

「自分でやれっていいたいとこだが、温室育ちにしてはいい覚悟だ。気に入ったぜ」

ケセセ、と笑ったプロイセンが、軍刀を振り上げる。

「戦争にようこそ!お嬢様!」


(ボロボロになって、血だらけになって、それでも彼はわたしを見て綺麗だと言ってくれた)




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