まねっこしっとも恋じゃあない




「会川くんって謎が多いって気づいてた?」
「それ本人に言っちゃうゥ?」
「だからわたしも謎をもっともとうかなと思って」
「ほーんがんばれ」
「ありがとう!ミステリアスガールをわたしは目指すよ」

わたしは会川くんのことをリスペクトしているので、格好よさそうなところはガンガン真似させてもらう。それがおしゃれへの近道だってファッション誌にも書いてあった。

「名前ちゃ、」
「予定あるから明日ね」
......
「ねぇ」
「ごめん今度でいい?」
......
「おい」
「今はちょっと、」
「オレが今こっちこいっていってんだよ」
「えっあっはい」

オラついてる会川くんも格好良いなあと思いながら、会川くんの座っている椅子の前にいくと、立ち上がったまんまの会川くんが、わたしの脇の下に手を差し込んでもちあげる。会川くんは背が高いので、軽く腕をあげるだけで、わたしの身長が30センチくらいプラスされた。

「わあちからもち」
「なんでマスク変わってんの?」
「えーひみつ」
「は?なんで秘密にすんの?」
「えへ、恥ずかしいし......」
「なんで、秘密に、すんの?」

マスクの向こうから睨みつけられて、どうしようかなあと少し悩む。謎は謎のままであるべきでは?でも別に会川くんに隠してるだけでみんな知ってるしな?まあいいか。

「あのこれ、会川くんのまねっこ、キャップかえた、ほら、」
「.......ほかに言うことは?」
「?ひさしぶり〜〜〜」
「そうだよ!ひさしぶりだよ!わかってんじゃねェかこのアホ!」

ギューッ、とオノマトペで表現できそうなかんじで、会川くんに抱きしめられる。ぬいぐるみになった気分だ。

「会川くん、マスク、マスク当たっていたい」
「オレのこと追っかけまわしてたくせに、急になんなんだよ、」
「デンジャーでミステリアスなかんじになろうかなって。なってた?あとマスクが」
「外せばいいンだろ!もーーー!」

カパッ、と会川くんが片手でガスマスクを外した下から、ずいぶんひさしぶりの、黒い瞳が出てくる。眉間にシワが寄っていても、やっぱり会川くんのお顔は素敵だ。真似したい。

「ウワッ!会川くんっておっとこまえーーー!知ってた?」
「最近オレの顔をべた褒めする女の子が周りにいないから忘れてましたぁ」
「こんなに格好良いのにねえ?」
「そーだよかっこいいんだよオレは」

というかそもそもなんの話をしていたんだっけ?そう聞くと、浮気調査、と言葉がかえってくる。うわ......き......?

「会川くん奥さんできたの!?ヤダ!別れて!」
「やっぱりオレのこと好きなんじゃん!」
「え、うん......?」
「じゃあ秘密やめて、嫌いになるよ」
「そうなの?じゃあやめる」
「......ハァーーーー、名前ちゃんさぁ、」
「なに?」
「何でもない」

ぽいっと放り投げるみたいに床に降ろされて、たたらをふむわたしを置いて、いつもみたいに会川くんが勝手にどこかにいこうとする。ついていっていい?といつもみたいに聞いたら、今日はいつもと違う返事が返ってきた。好きにしたら、といわれたので、うしろをついていく。

「どこいくの?」
「昼メシ」
「ねえおんぶして」
「......イイヨ」


(自分の隠し事を口に出すことはできないのだけれど)




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