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イーラはまりあんが勧めた椅子に座ると、机の上のスコーンを見た。

「これ、どうしたの?」
「僕が焼いたんです。よろしければイーラ様もどうぞ」
「すっごくおいしーんですよ!」
「本当?それなら私も、貰っても良いかしら」
「勿論です」

透輝が笑顔で頷けば、アルバがスコーンの入ったタッパーをイーラの方に寄せる。
その中から一つをつまむと、イーラは一口それをかじった。
彼女の垂れ目が、ほんの少し大きく見開かれる。

「美味しいわ」
「でしょう?」
「なんでアルバちゃんが得意気なんよ」

まりあんの至極まっとうなツッコミに、アルバは首をすくめてちろりと舌を出す。
その仕種にイーラがふふ、と声を出して笑った。

「なんか美味しそうなもの食べてますねー」
「あ、ラフィリスさん。どうぞー」

余所のテーブルから引っ張ってきた椅子に座り、緑髪の女性がスコーンをつまむ。
気付けば、様々なアナザーが透輝たちのテーブルに集まっていた。

「本当においしーっすね、これ」
「座りなよ、ユキヒロさん」
「あー、ごめんごめん」
「あ、桜狐さんもどうですか?」
「え、良いんですか?」
「どうぞー」
「ってか、だからなんでアルバちゃんが言うん」

イーラを中心に、賑やかに時は過ぎていく。
スコーンが無くなってもなお、その賑やかさが無くなることはなかった。









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