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ラウンジに人のいない時は無い。
透輝がスコーンを持ってラウンジに入った時も、当然ながら適度なざわめきに満ちていた。

「あ、とーきさん」
「ほんまや。ほら、こっちこっち」

二人の女性に呼ばれ、透輝はいそいそとその二人がついているテーブルに近寄る。
ゴスロリを着た少女が、透輝の手元をひょい、と覗き込んだ。

「とーきさん、これなに?」
「ん、スコーンを焼いたんでお裾分け。どーぞ」
「めっちゃ美味しそうやないの」
『透輝さんのお菓子は美味しいんですよ』
「デレアレスのおいしさには負けますご馳走様です!」
『せっかく褒めたのが台無しじゃないですか!』

透輝とアレスのやり取りを余所に、ゴスロリ少女もといアルバと関西弁女性もといまりあんはスコーンを食べ始めていた。
もしゃもしゃと咀嚼しながら、アルバが幸せそうな溜め息を吐く。

「おいしーです……!」
「そう?それは良かった」
「意外な特技やなあ」
『食い意地が張ってるだけですよ』
「アレスーっ、しー」

「楽しそうね。何をしているのかしら?」

慈愛に満ちた、柔らかい女性の声。
三日月を模した金属板のついたバンドで飾られた髪は柔らかな金色、豊満な胸部を強調するビスチェの上からマントを羽織っている。
柔らかく微笑むこの女性こそが。

「イーラ様。珍しいですね、此方にいらっしゃるなんて」








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