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自室の扉を開けた透輝は、重たいブーツを脱ぐとスタスタとキッチンに直行した。
本格的なオーブンの中を見て、満足そうに顔を緩める。

「うん、焼けてる焼けてる」
『何がですか?』
「ふふん、お楽しみ。…さてさて、みんな出てきていーよー」

声に呼応するように、つむじ風が五つ。
顕れたデビルたち、ウァプラのラピスラズリとグラシャ=ラボラスのランブルはソファに身体を沈め、ラウムのアメジストはラグの敷かれた床にぺたりと座り込み、バアルのマラカイトはソファのひじ掛けにもたれ掛かるようにして立った。
ウヴァルのアレキサンドライトは、透輝の左斜め後ろでふよふよと浮いている。

「じゃ、お茶にしようか。ウサギの程じゃないけど、僕のお菓子と紅茶も中々のモノなんだ」
『ホントウに?それは、タノシミ』
『ほう…主は器用なのだな』
『器用、とは少し違うぞ?』
『食い意地張ってるだけなんだよね!』
「ランー、リジー、せめてオブラートに包んでくれー」
『否定しないところが透輝さんですよね』

水を入れた薬缶を火にかけ、透輝がオーブンから取り出したのはスコーンだった。
桃のジャムを小さな器に出し、皿に並べたスコーンと共にソファの前にあるローテーブルに置く。
ほんのり甘い香りが部屋に広がった。








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