02 [ 16/30 ]
「さて、一旦帰ってお茶にしようか。ミズとマリーの歓迎会も兼ねて、ね」
『ただ休みたいだけでは?』
「まさか。……………………まさかぁ」
『間が。』
アレスの言葉に、透輝は視線を斜め上へと向ける。
冷静な突っ込みを受けつつ、彼女は足取り軽く闘技場を出た。
城へと帰ってきた透輝は、ラウンジには寄らずに真っ直ぐ自室へ向かおうとした。
居住スペースへ繋がる魔方陣に乗ろうとしたところで、右肩をつつかれた彼女は左に振り向いた。
「なんで?」
「いや、だってそのまま振り向いたら引っ掛かけられそうだったから……」
「うーん、バレてたか」
ごめんね。
悪びれもせずににっこり笑った彼女――まりあんを、透輝はジト目で見た。
「完全確信犯じゃん……っつか、毎回されたらそりゃ学習しますって」
「だってさ、透輝さん一回も引っ掛かってくれないんやもん」
「そりゃまあ」
曖昧に頷いた透輝に、まりあんは独特の訛りで話し続ける。
その後ろから、まりあんのデビルがひょこりと顔を出した。
『行かなくて良いんですか?』
「あっ、そーだった!今日はね、東の人とダンジョンのぼる予定なんよ」
「東の人………イケメンさんですか?」
『そらもう、まりあんさん好みの素敵な方で』
「フェンリルちゃんってば!言わんでええって!」
照れた様に顔の前でバタバタと両手を振ったまりあんは、「じゃあね」と笑うと外へ向かう魔方陣へと歩いていった。
「……相変わらず明るい人だよねえ」
『透輝くんとは大違いだね!』
「僕が根暗だって言いたいのかい?ん?」
『違うのかい?』
「……………………………」
『復唱拒否ですか』
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