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≪贖罪の塔≫とは、四月島の中心にそびえ立つ巨大な塔だ。
この塔の最上階で眠る少女≪アリス≫を目覚めさせることで、魔女とアナザーは≪完全≫になると言う。

「………ま、≪アリス≫と言えば永遠の少女の代名詞と言っても過言では無いからね。それが本当にその少女の名前なのか、それとも彼女の本名は別にあって、ただ象徴としてアリスと呼んでいるだけなのか……」
『………?』
「僕の持論。……けど、塔の最上階に囚われてる、っつーシチュから考えると、象徴として呼ぶなら、アリスよりラプンツェルやオーロラ姫の方が適切じゃないかな?」
『……相変わらず、良く解らないことを考えていますね』
「ははっ、確かにね。僕もたまにはこうやって口に出して整理しないと、良く分からなくなるよ」

目を閉じてクスクスと笑いながら、透輝は登るべき塔の下へと降りていく。

「………与えられる情報は、総てでもなければ絶対でもない。冷静に吟味して、信ずる拠を決めないと」
『……それは、きっと正しいことです』
「ありがと、アレス」

戦いたいアナザーが、塔の地下に集まる。
東西南北、全てのウィッカのアナザーが集まるこの場で、透輝はきょろきょろと辺りを見回して仕掛けられそうなアナザーを探した。

「……あ、あの人とか良さそうだよね」

透輝が指差したのは、紫の椿の紋章を額に刻んだ北ウィッカのアナザー。
透輝は彼に後ろから近付いて、ちょんちょんと肩をつついた。

「おにーさん、僕と一発やらないか」
『言葉を選んでください。相手の方も困惑してます』
「あはは、ごめんごめん。……気を取り直して、おにーさん、僕とバトルしない?」


******


「………ありがとね、楽しかったよ?」

何処かへ歩いていく対戦相手の背中へ向けてひらひらとやる気無く手を振り、透輝は溜め息を吐いた。

「……つかれた。イボスきらいだ」
『まあまあ、落ち着いて』
「リジーが来てくれないと想像以上にきついなあ」
『ごめんね、透輝くん』
「リジーが悪いんじゃ無いよ。……さてさて、どのくらい溜まったかな?」

懐に手を突っ込み、透輝はSSを一つ取り出す。それはうっすらと緑に輝いていて、透輝は満足そうに頷いた。

「よしよし。これならあと一回位でいけそうだ」
『それは……?』
「ザガン、てデビルが封印されてるっぽい」
『適当だねー』
「ま、ね。……さて!休憩しようか!」

無駄にキラキラした笑顔でのたまって、SSからのブーイングも完全にスルーして颯爽と階段を登っていく。
塔の目の前にある魔方陣に乗った透輝は、魔方陣が黄色く輝きだした事を確認してから、行き先を宣言した。

「イーラ様の元へ、帰城する。……疲れた」
『一戦しかしてないくせに』
『もやしー!』
「外野煩い!」









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