雨だった。
 普通の感覚なら外にも出掛けないようなどしゃ降りの雨。戦場で鳴り響く弾丸のように叩きつけられる雨の音はやかましい。それが窓を閉めカーテンをしていても聞こえてくるものだから、集中を削ぎ、やる気を無くさせていく。
 二時間前までは休むことを知らぬようになり続けていたタイピングの音はスローモーションになって時々止まっては数分なにも聞こえなくなる時もあった。今は完全に途絶えていた。ライブラの室内は雨が降り続ける音に支配されていた。
 ほんの数分前までは
 室内にいるスティーブンは扉の前に転がる男を見ていた。
 あーー、死ぬかと思った。そう言いながら荒い息を整えている男はスティーブンが知るなかで一番の人間の屑だ。屑を煮詰めてしまったような男だ。
 全身びしゃ濡れでこの様子では下着も全て濡れているだろう。
 荒い呼吸を整え終えた男が部屋のなかを見渡して漸くスティーブンのことに気付いた。ゲットその顔を歪めている。
「なんでスターフェイズさんがここに。今日って雨が酷くてそとにでるのは危険だから自宅待機って話じゃなかったすか」
 下唇を感で睨むように見つめてくる。きっとここなら誰もいないからのんびりできると思っていたのだろう。スティーブンの手が乱暴に自分の頭をかいた。
「そのはずなんだがな......。なんで分かっていてお前はここに来るんだ。ちなみに僕は泊まりだ。そもそも家に帰れていないから、こんな雨のなか外を歩くなんて馬鹿な真似はしていないんだよ。
 お前はなにをやらかしたんだ」
 はあと聞こえてくるため息。ほどほどにしろよなんて言う声は少しばかり疲れがにじみ出ている。雨の音が酷い。会話の最中にすら耳に入ってきている。
「ひでぇ。やらかしたこと前提かよ。女の家からおいだされただけなのに」
「やらかしてるだろうが。全くやり部屋にでもいけば良かったじゃないか」
「やり部屋は今女どもが修羅場っていて何が起こるかわかんねえんすよ」
「はああ。お前は本当屑だな」
「ひで」
 何がおかしいのか男は楽しそうに笑う。ケラケラと笑う声が寝不足の頭に響いた。思わず顔をしかめるのにんと笑っていたザップの目がスティーブンを見る。
 ことりと傾く首。
「どうかしたんすか」
 ザップの目がじっとスティーブンを見てくる。いつもはどうしようもないほど腐った目をしている癖にこういう時だけやたらと鋭い。チッと舌打ちをしそうになったのを押さえて、それよ

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