あついな。
 そう思った。
 褐色の手は暑い。それを握り締める己の手は嫌になるぐらい冷たかった。冷たすぎるぐらいなのに、それを握り締めたザップはうわぁ、つめてぇ。あれ、今冬でしたっけなんて楽しそうに笑っていた。
 まだ秋になったばかりだよ。昨日もお前は暑い暑い騒いでいた。そう告げてやればそうでしたそうでした。なのに何であんたの手こんな冷たいんですか。そんな風に言いながらぎゅっと僕の手を握り締めてくる。
 やたらと熱い手だ。
 そのわりには握りしめられているのを嫌に感じることはなかった。何度も握り方を変えてはつめてぇつめてぇと騒いでいる。
 あんた冷たすぎるんすよ。そう言って僕の手を暑い手が包み込んできた。触れてない箇所がないぐらいしっかりと両手で握られたかと思うと、もう片方の手に手が伸びる。どうせこっちも冷たいんでしょと言って握りしめてくる。触れば冷たいとまた声を上げた。
「本当どうやったらこんな手冷たくなるんっすか」
 屈託なく彼が笑って聞いてくる。僕はただ笑った。どうしてだろうね。体質かな。なんて言うのに彼の手の力は一層強くなる。その分暑さもより強く感じた。
 溶けてしまいそうなほど暑いけど、僕の手が解けるようなことはない。
 当たり前のことだけど、どうしたってそれに安堵してしまう。僕の手は解けない。僕はまだここにいる。ここで生きている。
 だけど時折溶けてしまえばいいのにとそう思ってしまう。
 ぎゅっと握りしめた手が強くなった。
 その手は僕の冷たい手を握っていても暑いままだった。











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