「みゃ、みゃ~」
朝早くに起きた福沢は隣から聞こえてきた抗議の声に慌てて息をとめていた。そして素早く布団を子供の体に巻きつけていく。
「みゃ~~」
安らかな声。布団の中丸くなった子供がすやすやと寝息を立てていくのに吐息が落ちる。
その小さな頭を撫でてから立ち上がる。子供は寝起きが悪い。猫だからなのか。それとも子供の性質がなのかは分からい。がとにかく朝は遅く福沢が起こさないと起きない程であった。やっと起きたと思っても目はしょぼしょぼとしていて隙を見ては眠ってしまいそうであった。
彼用に覚ました朝ごはんを何とか食べたころに目がさめて元気にお話するようになって
くる。子供の話は様々で今日の予定だったり、お昼はどこに行きたいだったり、後はいつでもいいようなたわいのない話だったりする。
それらを聞きながら支度を整えて朝は出かける。にぎやかな朝を嫌いではない。
むしろその毎日が楽しくて好ましかった。探偵社につくと子供はその日休みの人の席をかりて午前中のうちは勉強をしている。ワークシートで一人黙々としているが、時々手が空いたものが勉強を教えるか一緒に勉強をしている。
最低限の生活ができる程度の読み書き計算はできるが、それ以外はさっぱりなものも多かったので子供の存在は大変役に立っていた。どうやら子供はとても賢いようで時には彼らの先生になることもあった。
あいにくとそれなりに仕事があって福沢がその姿を見る機会はないが、楽しそうに先生をしているらしらった。
昼になると福沢に用事がない時は共に昼食を食べる。 うずまきで食べる時が多いが別の所で食べる時もあった。社員がどこの店は美味しかったと話すのに子供が興味を持つのだ。
その話をしていた社員と数人で行くこともあって食事はにぎやかなものになる。どうやら誰か子供の興味を引くことができるのか。
近ごろは勝負のようになっているらしく、連日にぎやかな食事になることもあったが、それもまた悪くなかった。明るくて可愛い子供はみんなの人気者だった。
昼を食べた後は子供は手があいている者がいればその者達と遊び、いなければ一人で本を読んでいく。そうして十五時になるとみんなで一度おやつをとる。
各々好きにとっていたのが子供来てからは十五時にみんなで取るのが恒例となってしまっていた。
福沢が共にとるか、とらないかはまちまちであったが、決まっていることは一つあってそれはその後、おやつを食べ終わった子供と二人、昼寝をすることであった。
子供はかなり探偵社のみんなになれたけれど、それでも眠る時は福沢がそばにいることを望んだ。おやつを食べる時はそのままお昼寝をするが、そうでない時はおやつを食べ寝くなったころに子供が福沢のいる社長室の戸をノックする。
小さな音だが聞こえればずぐに開けていいよと答える。ひょっこりと小さな耳が見える遅れて子供の頭があらわれる。
子供の目はもうすでにしょぼしょぼしていて、尻尾も耳をたれていた。とてとてと駆け寄ってきては福沢の前で立ち止まる。
みゃ~って小さく鳴いた。その声もまた眠さを伝えるものであった。
「おいで」
腕を広げれば子供は手の中に抱きついてくる。顔をすりすりと胸元におしつけては、そこから見上げてくるのだ。
今にも眠たい。そう言いたげである。
ぽんぽんと子供の背を撫でていく。子供はすぐにでも瞼を閉じて、そして寝息をたて始めていた。
すやすやと眠る子供を起こさぬようにして福沢は医務室に移動する。ベッドはこの時間はしっかり整えられて眠れるようになっていた。
子供を横たえ自らも横になっても安らかに眠る子供を見守る。あどけない顔をしている。
お昼寝は大体三十分から一時間で終わる。
その後は子供はまた大人しく過して17時になったら仕事が終わる。みんなにあいさつして福沢の家に帰った。
家に帰れば手洗いうがいをして二人で夕飯の支度へ取り掛かる。子供は素直に福沢の言うことを聞いてお手伝いをしてくれる。そうして夕食を作ると二人で食べる。
その時その日あった話をするのが日課だった。たった一日なのに子供はずい分とたくさんのことを話してくれて、食べ終わるのもその分遅くなった。
食べ終わると2人で洗い物をしてそれから風呂に入るり人の形をしているが、猫の習性もあるようで子供は水の嫌いだった。だから手早く洗ってすぐに出してやる。
その後体や髪を拭いてやる頃には子供はもうおねむであった。うつらうつらと舟を漕ぐからまだ8時前にもなっていないが、2人で眠る。
子供が安らかに眠るのを見つめ福沢も眠りに落ちていた。
どうか子供が明日も健やかに過ごせますように
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