大人何てものはただ少し早く産まれて、その分周りの伝手が多いだけの利用してやるただそれだけのものだ。
 その癖してやれ自分の方が偉い。子供のくせにとバカな癖して下に見てくる面到な奴ら。そう思ってた。
 太宰は今、バラバラと吹き飛んでいく男達を見てその目を大きく見開いていた。
 そして大丈夫か少年とそう言ってくるのだ。
「助けが遅くなってすまない。怪我はないか」
 さしだされる手。じっと見つめられ太宰はすぐには言葉を出せなかった。目も口も開いて目の前の男を見てしまう。太宰が身を寄せている医院に何度か来ている
のを見たことがあった。
 話したことはないほぼ知らない男。
「何で」
「森に聞いてここまで来た、間に合ってよかった」 
 その男が太宰の体の上から下まで見てくる。怪我をしていないかを目視で確かめているのだろう。とくに何もしていないことが分かると表情はあまり変わらないもののそっと肩をおとしていた。
「森さんが僕を助けろって言ったの」
「……あ、ああ」
 太宰の目は男の口元がほんのわずかにだがひきつるのを見た。
「嘘はいいよ。森さんが助けに来てくれたこと何て今まで一度もないし。もしかして森さんが捕まって別人がなりかわってるのかと思ったから。
 でもよかった。森さんが言ったわけじゃなくて、でもならどうして助けに来たの」
「どうしてもなにも子供が捕まったと聞いたら当……。
 あ、ひまだったからだ」
 男の眉間にしわができていた。
 舌打ちこそないものの険しい顔をして一度だまりこくる。太宰はそんな男をその大きな片目にじっと映している。
「……帰ろうか」
 男の手がもう一度太宰に差し出される。太宰とサイズの違う大きな手。固またまま映し、太宰と恐る恐る男に触れていた。ぎゅうと握りしめた男が大宰の体をだきあげる。
 視線が高い位置になって驚く太宰は思わず男の体にしがみついた。鍛えあげられ広くたくましい体は太宰を抱えあげてびくともしない。
 そのまま歩いていこうとするから太宰はあのと慌てて声をあげていた。
「私、歩けますけど」
「そうか。でももう遅いし、疲れただろう。大人しくしているといい」
 男の腕はますます強くなって太宰を運んでいく。落ちそうになることもなく太宰の目は何度も瞬きをくり返した。
「力持ちなんですね」
「そうか? お前は軽いからわりと誰でも抱きあげられると思うがな。むしろ軽すぎるぐらいか。ちゃんと食べた方がいいぞ」
「……はい。それに暖かいですね」
 太宰の体が男にすりよっていた。首すじに顔をうめてそのまま動かなくなるのを男はそのままで歩いていく。



 医院に帰りつくと大宰の目はまたぱちくりと大きくなっていた。
「どうしたの、森さん」
 原因はズタボロになり頬が大きく腫れ上がった森だ。
「ちょっとね、君か捕まったりするから」
「何でもない」
 深く息を吐きだす森に、言葉をかさねる男。丸い太宰の目が未だ男の腕の中にいながら男を見上げる。
「殴ったんですか」
「素直に場所を教えぬからな。気にすることはない。悪いのはこいつだ」
「うん」

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