ほがらかな日の光がふりそそぎ暖かくなった春のある日、福沢は目の前にふわりと降ってきた小さなものを受けとめていた
 桜の花を一つ傘のようにして降ってきたその生き物は福況を見つめて小首をかたむけ、それから私のこと見えるのと口にしていた。その言葉に頷いて福沢は手にした小さな生き物へ大丈夫かと聞いた。生き物は目を瞬かせそれからふわりと微笑んでいく。
「貴方、福沢さんでしょう。前乱歩さんが風に飛ばされた時、お世話になったと聞いております。私達は縁ができた相手の元に行きやすいので今度誰かが飛ばされても同じ人の所へ行くだろう。何かあればお世話になれと言われているのでこれからよろしくお願いします」
 うふふっと手の平の上の小さきものが笑う。
 がっくりと肩を落とした福沢は桜の妖精とはみなこうなのかと頭をかかえながらもその小さな体を落とさのように手の平の中に包み込んでいた。
 手の中で小さきものが笑っている。


「うっふふ。乱歩さんが福沢さんの手は僕らの大好きなお日様と同じあたたかさと言っておりましたが本当ですね、暖かくてすぐに寝てしまいそうです」




「もうついたのですか」
 布団の上に下した途端に小さなものが目をあけていた。ごしごしと目をこすりながらその目で 部屋の中をみていく。キラキラと目が輝いていた。
「ここか人の部屋というものですか、あ、これはもしや布団というものですね。聞いていた通りふわふわです。うわぁ〜〜私、今日はここでねたいです。ふわふわ気持ちいいです」
 小さきものは布団の上で跳ねまわり、そして笑っていた。まあ、いいかと福沢の口からでていく。そこを奪われると眠れる場所がないのだが、あまりにも幸せそうなのでまあ、良い
かと思ってしまったのであった。
「それより明日は私は用事があるのだが貴君の家探しは帰ってからにするか。それとも共に行き直接行くか、直接の方がしんどいかもしれぬが、探す時間はたくさんとれる。
 早く帰る方がいいか」
 飛び跳ねていた小さきものの動きが止まって、バチバチとその小さな体でみると大きな目が瞬きをしていた。ことって首が傾いてえっ何て声かでていく。
「私、帰りたくないのですが帰らなくちゃだめですか」
「は……。貴君はあやまって来てしまったのではないのか。まさか家出でもしているのか」
「家出ではないですけど、でも私、里に帰るより人の暮らしをみてみたいです。風が強くて飛んできてしまったたけですが、外の世界は前から興味があったのです」
 小さな体。大きな目。それをみつめてきてお願いしすってうるうる瞳をうるませるやたらと可愛い仕草であった。あ、と思う。こいつ自分が可愛いととしってるなってそろ思ってしまたが、福沢はその言葉を口には出せなかった、嫌だと言うこともできず、好きにすれいいがと口にして買ってきたものを表に出していた。
 それは植木鉢に植えられた花で、小さきものは輝いていた瞳を一瞬緩めまた喜んでいた。
「その花は私のですか」
「ああ、お前たちは花を食べるときいたから用意したが、しばらくずっとくらすとなるとこれだけでは足りぬだろうな。、
 また明日かって来よう」
「ありがとうございます」
 にこにこと小さきものが笑う。だが福沢はそれになぜか違和感を感じてしまっていた。南だろうかと考えながら自分用に買ってきた弁当をあけていた。普段は作るのだが今日は小さきものように買い出しへ行くので帰りが遅くなったから近くで買ってきたのだ。
 それをとりだして食べていこうとするのに視線を感じて福沢は小さきものをみた。布団の上、ちょっこんと座った小さきものはその目をキラキラさせて福沢をみてきている。正確に言うとその手元だ。弁当の中をじっとみている。
「それはうわさに聞く人間の食べものですよね。おいしいのですか」
「ああ。まあ、私にはうまいと思うが、お前がどうか分からぬというか、貴君たちは花の栄養をとって生きるのだろう。食べられるかもわからぬぞ」
 キラキラキラキラで小さきものの目は輝いて弁当を見ている福沢の言葉さえも聞いてないようであった。いつだったかにあった同じような小さきものは興味も示さなかったからその違いに驚いてしまいながらはてどうするかと考える。
 じっと小さきものを見る。見つめられていることに気付いた。小さきものはその大きな目をさらに輝かせてみてくる。まあ、何かあればすぐ対処すればよいかと福沢は小さきものに蓋の上少しわけたものを与えていた。
 パァーって、小さきものの顔、満面の笑みがうかんでいく。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです。どれから食べようかな」
 きらきらの目が蓋の上で踊る。その姿を頬を緩めてみつめてから福沢はあっと一つの事に気付いてしまっていた。何ということのものではなく小さきもののはしがないだけのことだ。
 でもそれでは食べづらかろうと福沢は悩みどれを食べるのだと聞いた後、これと小さきものが指さしたものを己の箸でつまみ上げていた。あって小さきものが声を上げ、バタバタとその手を動かす。
「それは私のです。とっちゃ駄目!!」
「安心しろ。とったのではない。ほら」
 ぷくっと頬をふくらます小さきものの口元に箸を持っていく。小さきものはバチバチ目を瞬かせた後、笑顔になってかじりついていた。もきゅもきゅとロー杯に放り込んだものを咀嚼して小さきものは笑顔になっていく。
「おいしい!! 人間はこんなおいしいものをいつも食べているのですね。うらやましいです」
 ほっぺをおさえたが小さきものが体をくねらせふわふわ笑う。嬉しいと微笑む小さきものの姿は愛らしく福沢の頬もまただらしもなくゆるみそうであった。
 何とかこらえて何か食べたいかととう。これって小さき手がおかすの一つを指さしていく。はいと掴んで口元また運んでやる。あーんとあけたロが一杯にかじる就いていく。小さきものの頬は蕩けていた。


小さきものとの暮らしは順調でそして充足感のあるものであった。
 朝起きれは仕事に入って昼の間は仕事、仕事が終れは主に帰って寝るだけのような日々をおくっていた福沢にとって小さきものは退屈を紛らわせてくれると共に疲れた心を癒してくれる存在であった。
 疲れて帰ってきた所にお帰りなさいと小さきものが笑顔と共に向かえてくれる。それだけでも癒えるものがあった。
 小さきものも福沢での部屋での生活を堪能していた。一人の間は本を読んで過したり、テレビを見て過ごしたりして人間界のことを勉強しており、福沢が帰ってきてからは色々なことをお話ししてくれる。
 人間界の食べ物を食べるのが好きで特にカニが気に入ってる。後福沢が飲んでいたのをみて飲みたがったので飲ませた酒も好きになっていた。
 最近は何を作ってやるか、何の酒を買っていてやろうかと考えるのが楽しいのだ。
 今回も喜ぶ顔を浮かべながら帰った福沢は、帰り着いた家で見開き慌てることとなってしまう。元気に出向えてくれると思っている小さきものがあれ以来ずっと占領していた布団の上でぐったりとしているのであった。
 荷物なんて全部放りすてて小さきものの元にかける。どうしたと声をかければ小さきものはうっすると目を開けるものの力がないのか何かを言うことはなかった。その体がうっすらとだが薄くなっているようにも感じてますます福沢はあわてどうすればいいのかとの助けを求めて部屋の中をみた。誰もいないというのに縋るものを探し、それから小さきものに視線を戻し、どうすればいい、どうしたらいいのだと小さきものに問うが、小さきものは答えなかった。
 ぐったりと横たわりながらその目は時々開いては福沢を映していた。わずかにその口元が上がっている気もする。
 でも本当のことなど分からない中、ふいに福沢は昔ひろった小さきものの言葉を思いだして、ベッドの近くいつでも小さきものがふれられるように置いていた植木鉢を手にしていた。
 あれから数日たって水やりはしていたものの花はすでに枯れかけている、それでまだ大丈夫と信じて小さきものを抱え、その植木鉢の中、花の上に置こうとした。気付いたのか小さきものの体が初めて動いて暴れていく。
 何が何だか分からない。
 でも何かを確信して福沢は小さきなのを枯れかけた花の上におく。ふわりとやわらかな光が広がって小さきものの体の中に取り込まれていく。
 昔拾った小さきものはこれが僕らの食事だと言っていた。桜の妖精である自分達は花の栄養をすって生きているのだと。
 小さきものは人間のご飯を食べたがり、花には触れようとすらしていなかったが、これでもこと足りるのだろうと思っていたがどうやらそうではなかったらしい。
 小さきものは花をとらなくては生きていけなかったのだ。
 その証拠にどんどん小さきものの体の色が元に戻り、そしてぐったりとして少し冷たかった体があたたかさを取り戻して、その頬が色づいてきている。
 ほうとしてしまうとしばらくして腕の中で小さきものが顔を上げて福沢をみてきた。その小さな唇がむうと尖っていて不満そうであった。何でって声がする。
「何で気付いちゃうのですか。やっと私は消滅できると思ったのに」
 手の中でむくれる小さきものに福沢はその目を見開いていた。
 どうしてとそんな言葉がでてしまう。
「貴君は……死にたかったのか。何故。まさかそのために人間界にきたのか」
「ここに来たのは偶然です、みんなが楽しそうでよくやるな〜〜。でも私にはつまらないなってみていたら強い風が拭いて飛ばされてしまったのです。
 私の世界は滅多に強風など吹かないので驚いてしまったのですが、もしかしたら神様とでも言う奴が私にチャンスをくれたのかと思って死んでみようって思ったのです。私ずっとつまらなかったから」
 手の中で小さきものは座り込んではあって吐息をこばしていた。つかれてしまったんですとそう口にしている。前にあった小さきものとその姿は全然違っていた。小さきものとは随分明るいのだと思っていたが、手の中の小さきものは全く逆であった。
 どうしてだとそう問う。
 だって小さきものは答えた。
「私きっと間違って花の妖精に産まれてしまったのだもの。私、産まれた寺からずっと花のことを好きになれないのです。みんなが花を愛で花を愛して花と共に生きる中で私一人だけ花を愛でることも花を愛することもできないのです。だからもう疲れたのです」
とつとつと話した小さきものはふうと吐息を吐き出して手の上座ることも止めていた。
 何もかもを投げ出して大の字で眠っている。そんな小さきものの姿を見つめて福沢はしばし言葉を迷う。何とかけてやればいいのか思いつかなかった。
 小さきものたちのことを知らぬのもそうだし、これが普通の人の悩みでもきっと出てこなかっただろう。でも何かを言わなければと思うから言葉を考えて、そうして言えるのは身勝手な言葉だ。
「でも貴君は里に帰るつもりはないのだろう。で、あれば今の貴君は桜の妖精でもないだろう。ならば花を愛する必要も花と共に生きる必要もないのではないか。
 別の生き方をしてみるのもいいだろう。
 そしたら生きてはいけないか」
 ぱちくりと小さきものの目が大きく見開く。大の字になっていた体が手の中で転がるので慌てて指で押さえ支えながら起き上がらせていた。小さきものは福沢みる。
 とても酷いことを言ったその目に映す。
「でも私は妖精です。……それにもし違うものになるというなら私は何になるのですか」
「……そうだな。私の友とか、貴君との生活は安らぐものであった。
 だからまだここにいてほしいのだ」
 エゴしかない男をその目に映して小さきものは震えてそれからゆっくりと頷いていた


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