それはとてつもない衝撃であった。
 洗い物を終えて居間に戻った福沢が目に移したのは扇風機の風があたる場所で伸びている太宰の姿だった。茶色い毛に包まれたモフモフの小さな姿。いつもなら元気にボールでじゃれついているはずだが、ちょっこりと伸びている。
 目にした福沢は口元に笑みを浮かべてそっとその塊に手を伸ばしていた。
 抱き上げて太宰の小さな体を思う存分もふろうとしたその時、ぱっしりと音がしたのだ。太宰の体が床にはねて、そして扇風機の前で伸びる。
 抱き上げた情けない姿で固まりながら福沢は太宰を見下ろした。
 それは本当にもうしばらく動けなくなるぐらいの衝撃であった。太宰は風にあたってとても気持ちよさそうにしている。その姿を福沢の銀の目はじっと見ていた。


 その一日後太宰は特に問題もなく元の姿に戻っていた。あまり撫でてやることはできなかったがそれでも太宰的には十分だったのだろう。元の姿に戻って福沢に礼を言っては元の生活に戻っていた。
 だがあの時、衝撃を受けたのは福沢だった。
 福沢だったのだ。



 だから福沢は太宰がまた数週間後にポメラニアンに変身してしまった時、意気揚々と小さな太宰を家に連れ込んで、そして居間、壁についた真新しい機械の電源を入れていた。
 ぅぃーーんと小さな機械音。
涼しい風が機械から出てくる。太宰を床の上におろして、しばらく待った後、福沢は太宰に手を伸ばしていた。ぽてぽてと扇風機の前まで行ったはいいが福沢が電源をつけてくれないのに、首を傾けていた太宰は大人しく福沢の腕の中に抱かれる。
 逃げ出そうとするそぶりはない。福沢の腕の中からきょろきょろとあたりを見渡しながら、まあいいかと思ったのかどろーーんと福沢に身を預けて大人しくしている。その姿を見下ろして福沢は笑みを浮かべていた。
 ふわふわと太宰のモフモフの体を撫でていく


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