土曜日福沢の家には国木田がいた。
 あの日からというもの国木田はよく遊びに来るようになり、いい太宰の遊び相手だった。
 まじめだが子供なりの柔軟性というものがあり、今は太宰にからかわれるだけではないようであった。まあ、それでも太宰にからかわれていることは多く、苦労を掛けているようではあった。それでも楽しそうに土日や学校終わりなどに家に来て太宰と遊んでくれていた。
 今日は太宰のお気に入りのカルタをしていた。うさぎと虎の絵が可愛いかるたは太宰が見かけてこれは敦君と鏡花ちゃんですねというので私が買ったものだ。以来よくそれで遊んでいた。
 国木田とも何度か遊んでいたことがあり、その度にこの札とこの札の絵はこういう時の二人に似ているとかるたとは全く関係のないところで盛り上がっていた
 楽しそうでいいことだ。
 今も遊ぶ二人に思いつつ私は出かけるぞと告げていた。
 その声は幾分かいつもより低い。国木田は驚いたように私を見上げ体を硬直させるが、太宰は慣れたようにはーいと言って準備をしていた。国木田君も行くよと国木田を動かしている
「えっと、出掛けるとは」
「……餓鬼を迎えに行く」
 戸惑い準備しながら国木田が聞いた。答える声もまた低くなってしまった。駄目だと思いつつも今は少し機嫌が悪い。
 国木田が泣きそうになっている。
 太宰がすかさず乱歩さんのことだよといっていた。きっと乱歩さんが迎えに来いって駄々をこねているのだよ。いつものことだから気にする必要ないよと言っている。まったくその通りで頷くと国木田はああと納得した様子だった。
 乱歩のことは言ってなかったので、乱歩さんもいるのですねとどことなく嬉しそうでもあった。三人で車に乗り込む。太宰は助手席に座ったが、その助手席を見た国木田がひきつった顔をしていく。
 無理もない。
 助手席の中はぬいぐるみでいっぱいになっていてぬいぐるみに埋もれて太宰がいるような形だったから。自分の体にヒットするよう山を築いていたので苦しくはないそうだが、はたから見ている分には随分と窮屈そうに見える。
「おま、なんだそれは」
「乱歩さん対策なのだよ」
 むくりと頬を膨らませて太宰が国木田を睨む。ふんと鼻息荒くしている。



「あーーー!」
 乱歩を迎えに警察署につくと太宰は絶対下りないといいはっていた。分かっていた私は自分だけ降りて乱歩を迎えに行く。そして車まで連れてきたのだが、車の中を見た乱歩はあそこは僕の席だぞと太宰が座る助手席を見て騒ぎ、ついでに荷物を降ろしとけって言っただろうとまで騒いでいた。ふいとそっぽを向いた太宰はぬいぐるみの一つを抱きしめる。
 ここは私の席なんですと乱歩に対してはっきりものを言っては乱歩が怒っている。
「お前わがまますぎなんだよ」
「わがままなんて言っていません。事実を言っただけです」
「わがままだから」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人。国木田はぽかんとしていた。福沢がそんな国木田にすまぬなと言いつつ後ろに乱歩を放り投げ車を運転する。まあ、いつものことだと説明していた。
 どっちが座るかっていつも喧嘩している。私がと言い張ってついこないだ太宰が車の中ぬいぐるみだらけにしたのだった。可愛い私が可愛いものに包まれてたらもっとかわいい。社長も癒されるからうれしい。つまりここは私の場所。福沢さんをいやす係と訳の分からないことを言って怒られていたが、今もそれを主張している。
 まあ可愛いのは確かだった。
 福沢さんが甘やかすからと言ってくるのは乱歩だ。それよりと乱歩を見る。挨拶ぐらいしたらどうだといえばああと乱歩は国木田を見て久しぶりと言っていた。国木田は背筋をただしお久しぶりですと答えている。。いまだ唖然とした様子ではあるが、礼儀正しい姿だった。
こいつ相手にそんなことはと思いつつ面倒だから口にすることはしない。
 乱歩は国木田に国木田も社長に甘やかしすぎないよう言ってやってよね。なんて言っていた。あの、そのと国木田の目が泳いでいる。
 隣の太宰はぬいぐるみに包まれて可愛い姿をしている。ぷりぷりと頬を膨らませながらちらちらと抱えた猫のぬいぐるみの隙間から私を見てきていた。
 ちらりと後ろの国木田を見る。
 ねえと乱歩にせがまれて可哀想な国木田はそれでも答えられないようで私はほんの少し笑ってしまっていた。
 今更だが、そんなことを言っていた。
 太宰が不思議そうに見つめてくる。乱歩は嫌そうに眉を歪め。国木田はじっと太宰を見ている。
 首を傾けるその姿を見ながら福沢はその昔に国木田とした会話を思い出していた。
「お前も分かったか」
 問うと国木田の目が大きく見開かれた後、小さく頷かれていた。はいという声は小さい。何の話ですかと太宰が首を傾けて乱歩はそんなのわからなくていいんだよと怒っていた。何故ですかと太宰が聞いてくるのには答えず福沢はそうかとだけ言う。でもと少し口を尖らせた国木田は言った。
「流石にどうかとは思いますよ」
 ほらっと乱歩が嬉しそうだ。それでもやはり素知らぬ顔をした



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