飲みすぎてるなーー。
 缶ビール片手に机に突っ伏している与謝野。そして自分の隣で黙々と飲み続けている福沢を見て太宰はそんな感想を抱いた。二人の周りには数えるのも嫌になるほどの麦酒の缶が転がっている。どうするんだろっと太宰は机の端で不貞腐れている乱歩を見る。その周りには大量のお菓子。
 飲むかと福沢が缶を差し出してくるのを断りながら太宰は福沢を見上げた。
「まだ飲むんですか」
 問いかけるのにそうだな。まだ、もう少しと福沢は答えた。答えながら麦酒をごくごくと飲む姿にこれはまだまだ飲むなと太宰はため息を吐く。別にどれだけ福沢が飲もうと良いのだが寝に行けないのだけが厄介だった。福沢の肩に凭れかかりながら今日は何時まで飲むのだろうかとそっとため息を付く。その姿に何か勘違いしたのか。そうだと福沢は立ち上がった。
 背凭れがなくなり頬を膨らましながら太宰は福沢の動きをおった。棚をごそごそと漁る福沢は何かのチラシを取り出して。あぁと太宰からは何とも言えない声がでていた。
「与謝野。乱歩。夕飯を頼むぞ。机の上を片付けろ」
 ちらりと太宰が時計を見る。ただいまの時刻は八時半。そう遅い時刻でもないだろうがいつもと比べると一時間以上は遅かった。ええーーと二人から声が上がる。
「もう良いじゃないか。お腹空いてないよ」
「僕もーー」
「駄目だ。麦酒と菓子でお腹を膨らませるやつがあるか。しっかり夕飯も食べろ」「なら、もうちょっと先に思い出してよ」
「そうだよ。妾も本当はただ飯食べに来たんだしさ」
 もう嫌だと駄々を捏ねる二人。それに一喝した福沢は二人からの文句は聞こえないふりをしてチラシの番号に電話していた。メニューも聞かず頼んでいるのはラーメンのようだ。ちょっと上がる声を無視して大盛ラーメン二つと炒飯、餃子を五人前頼んでいた。メインは餃子で麦酒のつまみにするきだな。福沢の考えを読んで太宰はため息を吐く。乱歩も同じようにため息を吐いている。全くこの人はと思うのに大量の麦酒の缶と塵の山を抱えて福沢は台所に消えていた。
「福沢さんも勝手なんだよな」
「全くだよ。誰も大盛食べるなんて言ってないのに女の子に失礼だと思わないのかい」
 ぷりぷりと乱歩と与謝野が怒っていた。二人を見ながら太宰は曖昧に笑った。乱歩は分からないでもないが、与謝野は……そう思ってしまってから顔をそらす。台所から何かをしている音が聞こえてくる。
「何してるんですかね」
「さあね」
 与謝野が片手に持っていた麦酒缶を飲んだ。何となく無言の時間が流れていく。机に突っ伏した乱歩が唐突にじゃんけんしようと言った。え? と太宰が首を傾ける。与謝野は麦酒を飲んだ。じゃんけんと乱歩が手を振る。二人とも手を上げなかった。
「ちょっと」
「妾は酒がのみたい」
「私もやです。量が多いんですし社長に頼んだら良いんじゃないですか。社長が頼んだんですし」
 二人が話したときにピンポーンとチャイムがなった。あっと三人が声を上げ台所を見つめる。ピンポーンとまたチャイムがなる。台所は音が続いていて。ため息を三人が吐いた。これは行けと言うことだと理解して立ち上がる。
「だからじゃんけんしようって言ったのに」
「一人で持ってこれる量じゃないじゃないですか」
「だって僕やりたくなかったし」
 私もですよ。妾もだよ。乱歩の言葉に二人がツッコミをいれた。玄関には予想通り先ほど頼んだ出前が来ておりお代を払い、料理を受け取った三人は居間に戻ってそれを並べた。ラーメンは太宰と福沢の席、そして与謝野の席に一つずつ。炒飯は乱歩の席に。餃子を一皿真ん中において後の四皿は福沢の席においた。
 こちらの準備が整った所に福沢が台所から戻ってきた。お皿一つとお箸四膳を手にしていて並べていく。お皿のなかにはおひたしが入っていた。それをみて太宰が笑みを浮かべる。おひたしのなかには彼の好きな蟹が混ざっていた。
 いただきますと四人が声をあわせる。福沢がラーメンを太宰のもとに置いた。
「食べれるだけ食べろ。私は残りで良い」
「はーい」
 ずるずるとラーメンを食べ出した太宰はんと福沢を見上げた。餃子を一口つまんだ福沢は立ち上がりまた台所に向かっている。今度はそう時間がかからずに戻ってきた。戻ってきた福沢を見て太宰はチベットスナギツネのような顔をして固まった。乱歩もそうだった。与謝野だけが瞳を輝かせている。
 福沢は器用に手と腕を使いグラスと麦酒缶を二つずつ。そして焼酎の瓶を一本持ってきていた。与謝野の前にグラスを一つをおいて残りは全て自分の前におく。焼酎を開けてグラスに注げば与謝野に渡した。そして一つずつ麦酒のプルタブを開け、右手左手それぞれで麦酒缶を掴む。右手の缶をごくごくと一気に飲み干して、今度は焼酎の入ったグラスを掴んだ。左手の麦酒を飲んでから焼酎をのみ、今度はまた麦酒を飲む。時々グラスを置いて餃子を食べる姿を見て、これは朝までコースだなと太宰はため息を吐いた。膝枕して貰おうと思う太宰の前で乱歩が凄い勢いで炒飯を食べていた。





 

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