「酒飲み会しよう」
「はい?」
「はっ?」
 夕飯時、何の前触れもなく訪れた与謝野に乱歩と太宰は首を傾けていた。いきなり訪れるのはいつもの事だが、今回は訳のわからない言葉までついていた。
「酒飲み会しよう」
「……しようって毎日してませんか?」
「してるでしょ。たまに来たと思ったら朝まで酒を飲んで帰るんだから」
「違う違う。月見をしようってことさ」
 太宰が首を傾けてとい、それに乱歩が繋げる。二人の言葉を聞いた与謝野が話すのになるほどと太宰は頷き、薄々分かりはじめていた乱歩は頭を抱えた。
「月見のこと酒飲み会って言わないでくれる」
「つきを見ることを口実にしてお酒を飲むんだから酒飲み会でいいだろ。今夜か明日しよう
 うまいつまみを仕入れてくるからうまい酒を頼むよ」
 あ、これ決定事項だな。まあ、家のなかならいいか。朝が大変だろうけど、酔いつぶれたふりをして起きないでいよ。
 与謝野の様子に太宰はすぐに今後の方針を固めていた。
 ちょっと強めの酒を用意しとかないと。乱歩を酔わせて昼まで正常な判断を出来なくさせたら私の価値だ。
 太宰がそう思っているところに乱歩の嫌だよとの声が聞こえてきた。
「わざわざ月見て飲まなくてもいいでしょ。いつも飲んでいるんだから」
 月見しながら飲む酒がまたうまいんだよ
「良く言うよ。団子と酒がほしいだけじゃん。てか、お月見の日ならとっくに過ぎてるんだよ。十五夜何時だったと思ってるの」
「仕方ないだろ。いま思い出したんだ。何時だろうが月を見ながら酒を飲んだらそりゃあ月見だよ」
「やるなら一人で勝手にやってよ。僕らまで巻き込まないで」
 ぎゃあぎゃあと聞こえてくる乱歩の声。良くやるなと思っていた。だってと太宰はちらりと福沢を見上げる。与謝野が来てから一言も話すことをしていない福沢は夕食を食べながら何かを考え込んでいる。
「社長。月見のお酒は決まりましたか」
 小さな声で太宰は問いかける。んーーと福沢から聞こえてくる声
「大体は決まっているのだが、別のものもいいかと悩んでいる。お前は何かのみたいものあるか」
「社長にお任せしますよ。美味しいものをお願いしますね」
「ああ」
 福沢が乗り気になってしまっているのだ。与謝野だけでも手におえないと言うのに大黒柱の福沢まで乗り気になっていたら二人でどれだけ反対してもやることになるだろう。太宰には乱歩が与謝野と福沢に負ける未来が見えていた。
 仕方ないかと息を吐いて、福沢の目の前にあるお酒を浚っていた。






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