2023/08/09 05:41




太宰さんマフィア、織田作探偵社のif



「絶対迎えに行く。だから少しの間だけ待っててくれ」
 かつて昔、己が口にした言葉を思いだして福沢は細い吐息を吐きだした。それは何より大切で守らなければいけない約束であった。
 それから十五年たった今も守れてはいなかったけど。
 
 その約束のことを思い出したのは一枚の写真が原因だった。新人である社員がマフィアに襲われた先日、隙を見て織田がその場に来たマフィアの一人を撮っていた。太宰さんと呼ばれたという男。それはマフィアの幹部として知られる名でそれ以外はすべてが不明な男でもあった。もしマフィアが敦を襲ってくるようであれば、知っておいた方がいい相手だろうと、皆に配られたその男の写真には決して破ることの出来ない約束をした相手の姿が映っていた。

「いいよ。僕のことはおいていってもいいよ。
 おじさんが、おじさんでなくなっちゃうことの方が僕は嫌だよ」

 その時心に刻んだ言葉が思い浮かんだ。それは十数年前人斬りを終わらせたかった福沢に子供が伝えた言葉だ。福沢においていかれたらー人ぼっちになる子供がそれでも福沢に伝えた大切な……。
 だから約束したのだ、絶対に迎えに行くと。
 その約束を果そうとした時には既に子供はその場にはいなかったが、まさかマフィアになっていたとは……驚きはあった。でも納得もできた。
 そんな道しか選べなかったはずだから。


 待ってくれ。声をかけると男はとても驚いた顔をしていた。何でとその口が震えていくのに覚えているのだとそんな言葉が湧く。社員に聞いていたマフィアの動きにも合点が言った。眼の前の男がきっとそれを仕組んでいたのだ。
 その瞳を見つめる。褪せた色は昔と変わらなかった。
「約束を果すのが遅くなってすまない。もう遅いかもしれないが、私に機会をくれないたろうか」
 そんな子供にむかい差しだした手を子供は微動だにすることもなく見た。一見すれば何の感情の動きもないようだった。遅かったかってそんなことを思った。だけどそれは問違いだった。
 一拍後に子供の瞳が揺れた。僅かに、でも確かに揺れて、子供ははにかむような笑みを浮かべる。いいんですかってその口が動いた。私、マフィアですよって
「ああ、いい。そんなことはささいな事だ。むしろここまで遅くなって私がいくらだって謝まらなくてはいけないのだ」
 子供の目元は震えて、それからはにかむ笑みを強くしていた。嬉しいと言葉をこぼすのを見て、もっと早く迎えに来ることが出来ていたらと、胸の中が冷え、それでも今なおこうして待っていてくれた子供に喜びがあふれていく。今度こそこの子どもと共にと願う。だけど、でも、と子供の顔はしずんでいた。
 笑みが消えて暗い目で見てくる。
「約束覚えてますか」
「もちろん。いつか迎えにくる。何があっても迎えにくるから」
 告げた時の子供の顔まで全て覚えている。
「その後、その後もありました。迎えに来たその後は家族になろう。そう……。なのにもう貴方にはもう子供がいる」
「別に私には子供なんて」
「息子二人に娘が一人。貴方がどう思っていようと端からみるとと家族にしかみえません、私は貴方の家族になりたかったのに……。たった一人の大切な……」
 子供の声は小さかった。そして黒い目が福沢を見ていた。諦めた顔をして笑っていた。そんな子供に何かを言おうとして福沢は何も言えなかった。どうすればいいのかがでてこなかった。子供などいないとそう言い切れたら良いけれど周りからだけと言わず、己の心もそう感じでいるのを偽りきれなかった。
 口が空気を求めて開く。中は乾いていた。
 どうしたらいいとそんな声が出ていく。子供は再びわらっていた。
「もう大丈夫です。こうして声をかけてもらえただけでとても嬉しかったです
 だからもうさよなら。
 あの約束のことは忘れてもらって大丈夫です。叶えてもらえましたから」



 どうすればいいのかとそれではと去っていく者達を見送りながら福沢は考えていた。言いたいことがある。次にあの男に会えたならばと心に秘めていたこと。でも幾ら探しても会うことが出来なかった今、話し合いのためとは言え顔を見せてくれたこの時が最後の機会のように思う。
 でもこの非常事態にこんな個人的なことで状況をさらに混沌とさせるわけには行かないのではないかとも思うのだ。
 考えているうちにも男の姿は小さくなっていく。
 ここで逃してしまえば、もう……。
「待ってくれ」
 思ったときにはもう言葉は出ていた。福沢の目は遠くを行く男一人を見据える。共に振り返る他の物の姿は見えなかった。男一人に向かい歩いていく。男の目が戸惑いに揺れた。
「私と……」
 口が渇く。これさえも拒絶されたらと僅かにおそれが走る。でもそんな事を恐れ口にできなければ訪れるのは別れだ
 それだけは飲み込めなかった。
「結婚をしてくれないだろうか。たった一つ何者にも変えられない大切なものに、貴君になってほしいのだ」

ギルド戦のマフィアに共闘を持ちかけるあの場面でやってるからこの後騒ぎになる


奴隷×貴族


 陰気臭い場所だった。じめじめとして最低限の明かりさえもない。暗くて色んなものが混ざりあった酷い匂いがした。
 普通に生きる者がいるべきではない所。
 人生の終わりのようなその場で福沢は己の命がつきるその時をただ待っていた。周りには同じように生きる気々を亡くした者達がただ息をしている。
 ここは奴隷の収容場であった。
 かつては武人として戦い多くの戦果をあげた男であったが、今の福沢は祖国を失い奴隷にまで落ちただの敗戦者であった。守るべきものを守ることもできずに敗北した己の価置もみいだせず死だけを待っている。
 幸いなのは産まれつき恐ろしいと言われることの多い顔付きのおかげで誰かに買われずにすんだことだろう。 好き勝手使われるなどごめんだ。この仏頂面と言われる顔に始めて感謝した。そして一生この場所で過ごし朽ち果てるのだとそう思っていた。
 だけどそれはくつがえされた。
「決めた。貴方を護衛にする」
 口の端をあげた嫌な笑みと共に言われた言葉。目の前には黒服の少年がいた。



「やっぱり凄く似合うね、どう感想は」
 嬉しそうな子供から目をそらしなから福沢は己の姿を見下していた。白を基調とし緑で飾られたその服は、かつて祖国で暮らしていたころの騎士服を思いおこさせる。
 それは苦い思いを感じさせると共になつかしい思いも感じた。どうしてこんな服をと思わず見つめてしまった子供はその頬を赤く染めていた
「じゃあ、さっそく仕事をしてもらいましょう」
 そうしてうす暗い笑みを浮かべて福沢を見るのだ。体が悪寒で震える。息を飲み、子供を睨む。だが笑みは消えない。それ処がますます深くなる始末であった。子供の足は福沢の傍を通りすぎて、そしてさらにおくへと向かう。
 見たくはないが、そなえ見てしまう。子供がむかう場所には寝具があった。そして子供はその上で横になってしまう。ごろごろと転がるかと思えばすぐにその目は福沢をうつした。
「添い寝して」
 口からでたのは状況に合うような、合わないような微妙な言葉。寝具の上であるからそう言われてもおかしくないが、貰ってこられたばかり身をきよめてもおらず、そのくせ立派な服を着せられたばかり。何を求めているのか分かりづらい。
 何かを試しているのかもと思い動けなかった。
 早くそいねしてと子供の目が見てくる。
「……夜伽を所望か」
「ん~、おじさん思っているようなのはいらないよ。ただそいねして、て言ってるの」
 いくら考えても己では答えを出せず子供に問いかけていた。かと言って答えが分かるわけではない。同じことを言われるだけで、あきらめ言われるままに動いた。子供の隣に横になる。何も言わずる子供の目は閉ざされてそして体からは力が抜けていた。寝始める子供をそばにどうしていいのか分からなかった。



 はいこれと渡されたものを福沢は信じられない思いでみていた。子供は相も変わらずつまらなそうないつもと変わらない顔でてここにいる。けわしい顔をしていた男が一点にまにまと笑うのが気持ち悪かった。
 だからいったのにとため息をつく男を見る。
 男の奴隷なんて手にしても何の薬にもならない。損するだけだという言葉を思い出した。それでもいいと答えた子供も。
 つまり二人はこうなること……奴隷解放令だとかいうものが出されることを知っていたのだ、それこそ福沢を買う以前から……。
 お疲れ様なんて声をかけてくる子供。さようならと口にする姿はいつもと同じであった。その手が差しだしてくる小袋を見つめる。そこには大量のコインが入っている。これをもらいたい自由になれってそう言うことだ。
 子供の小さな手はふるえ一つなくいつも通りであった。その暗い目が受けとるのをまっている。福沢の手はどうしても動かなかった。
 どうしててその疑問だけが福沢の中渦巻いていた。
 知っていたのならばどうして福沢なんかを買ったのか




コナンin太宰


 その日、太宰が目覚めるとそこには白い天上が広がっていた。
 知らない天上だがわずかに匂う消毒液の匂いでそこか病院であると悟る。それと共に思い出す記憶りチェッと舌打ちが落ちた後、あれ?と首を傾けた。声が己のものではなかった。体に意識を向けていき、ふむと声を出す。
(どうやら私はちいさくなっているようだね)
あ~、と天上を見上げる。どうしてこんなことになったのかなんてぼやきながら、太宰は起き上がろうとした。出来なかったのはその前に人が入って来たからだ。「コナン君良かった気がついたのね!」
(……コナン? それにこの女性は……。あ、なるほど、私幼くなったわけじゃなく別の体に入ったのか。腹が痛いから小さくなったで間違いないと思ったけど……。あ、なるほど。この子も腹をさされたのか。
 にしても無茶するな、殺人犯をおいかけるなんて、しかも他の人が刺されそうになった所、かばいに入るなんてね)
 理解した瞬間、太宰の中には彼のものでない恐らくはこの体の持ち主のものであろう記憶が流れていた。それはすべてではなく最近のものだけだが、女性が誰であるかは分かっていた。
「うん、もう大丈夫だよ、蘭姉ちゃん」
「良かった。もう無茶しちゃだめよ、コナン君、三日も目をさまさなかったんだから、心配したんだから」
「ごめんなさい」
「お医者さんよんでくるからまっててね」
 言うだけ言って女性は小走りで部屋の中から出ていく。安心したのか涙を浮かべていた。
(可愛らしい女性だったね、この体でなければ心中にでも誘っている所なのだけど。
 所で一応君のふりして過ごしてみた方がいいのかな。コナン君)
 太宰は問いかけた。
 誰にと言うと先ほど、記憶を思いだす時、感じた体の中のもう一つの気配にだ。
(うん。そうしてほしいんだけど……何でこんなことになったのか、お兄さん、分かる。お兄さんの記憶が少し見えたから僕と同じ時間に腹をさされたことは分かるんだけど……」
(さあ?さっぱりだね。 異能力は私には効かないから不思議現象としか今の所は言えないかな。もしかしたら私が死んで憑依してしまった。とかかもしれないね、私は君と違って人がいない場所でさされたからそのまま放置されたか、遺体を見つからないように隠されたかのどっちかだからね。いやー、困った困った)
(全然困った風には聞こえないけど。もしかしたらずっとこのままってこと……·
 お兄さん、悪いんじゃないよね)
 もう一つの声は素直に応じて、そして太宰を探るようにしてきていた。もし実
体でも見えていたら、その目はとても鋭いことだろう。おや、太宰は心の中で片眉を上げる。どうにも子供らしくない。思い起こせば記憶の中の行動も子供とはかけ離れていた。そして太宰の中に流れこんでくる思考もまた子供らしくない。
(安心して、私は一般人に危害をくわえるようなものではないよ。聞いたことないかな、武装探偵社と言う所で働いていて、狙われたのもその仕事の関係だ。だから君が心配するようなことはない)
(……武装 探偵社。本当だ。でもお腹さされたのが仕事の関係は嘘だよね。女性関係の逆恨みって何したの)
(……この体心まで読めてしまうのは面倒だね)
(本当に。お互い伝わってくるもんね。隠し事の一つも出来やしないや。お兄さん知られたくないことたくさんあるみたいなのに)
(それは君もね)
 二入してため息をついたのは同時。あわせて体も吐息を吐いていた。
「新一。目覚めたと聞いたが大丈夫か」
「悪運が強いわね。工藤君」
 その時病室の扉がまた開いた。
 入ってきたのは医者を呼びにいった女性ではなく、ちょっと小太りぎみの男性と太宰の体の主と同い年ぐらいの少女だ。
「新一、工藤? コナンでじゃないの?」
「へ」
(あ、やべ)
「…!! 貴方誰」
 入ってきて早々室内は緊迫した状況になってしまった。
(はあ、なるほど、薬で体が小さくなってるんだ。黒の組織ってのが関わっているのか。うう~ん、この銀髪の男とサングラスの男かな。恐い顔してるね。一般に出歩いて大丈夫? 職質たくさんうけてそう)
(ぐっ。くそ、この体ホントかくせねぇ)
(はは、それよりいいの。あの子、シェリーちゃん? ふるえてるよ。普通記憶喪失とか疑いそうだけど、彼女は誰かが入れ替わっているって疑ってるのかな)
(まあ、組織の奴とか、別人にすり変わるのが得意な奴いるからな。
 一人や二人協力者がいてくれたほうがボロもでにくくなるだろうから、二人なら本当のこと伝えていいよ)
(了解)
 男が困惑し、子供が怯える前で二人はポンポン会話をした。ふたりとも思考が早いからか、それとも意識の共有があるからかよどみもなく行える。
「私は太宰治、君が考えた通り別人だけどすり変わっているわけではないから安心して、これは正真正銘彼の体で、私はどういうわけか彼の中に入ってしまったようだ。まあ、幽霊が取り憑いているとでも思ってくれたまえ。
 彼もちゃんと私の中にいるから安心してくれ。なんか話せるかな。あ~あ」
「は? 貴方何を言っているの。子供だからってそんなこと信じるって思わないでくれる」
「あ~悪い灰原、本当の話なんだ。お前の姉さんが宮野明美さんであることと、博士のお尻にほくろがあること。ついでに二人が病院近くのハンバーガー屋でお昼を食べたことで信じてくれねえか。博士のひげにはソースがついてるし、二人共ケチャップ系の匂いが薄っすらとしてるからな。灰原が博士が脂っこいハンバーガーを
食べること許すのは珍しいけど、病防近くに他に食べ物屋はねぇし、二人がずっと俺の目がさめるのを待っていてくれたとしたら不思議はねえよ。
 ありがとな」
「……ふん。どうやら本当のようね。全く面倒ばかりおこすんだから」
(ふふ、やるね。でも君が表にでられるなら私が君のふりしなくてもよさそうだねーって、ありゃ、そうはいかないのか)
 太宰は体の中のもう一つの気配が弱るのを感じて一つ嘆息していた。そうだなと聞こえる声は弱しい。
「でも、どうしてそんことが起きたんじゃ」
「それが謎なんだよね、同時刻に刺されたみたいだからそのせいかとは思うんだけど、どうしてなのうはさっぱり」
「ちょっとどうして工藤じゃないのよ、彼が話せるなら、彼に話させなさいよ」
「それがどうやら彼が話すと精神的にとても消耗するようでね。基本的には私がこの体を動かすしかないようだ」
「……そうなの」
 少女はとても不快そうに太宰を見て鼻をならした。
「あ、そうそうこのことは秘密にしてほしいな。あんまり大勢に知られてもいいことはないだろう?」
「そうね、分かったわ」
「了解じゃわい」
 丁度話が終わったころ、医者を連れて女性が戻ってきた。二人は入れ替わりに出ていきた太宰は診察を受けた。



(そう言えば)
 暫く入院することになった太宰はこれ幸いと布団の上でごろごろ過ごした。何も考えずゆっくり横になっていた夜、同じようにゆっくり休んでいたのだろうコナンに声をかけられた。
 彼の考えはじんわりと太宰の中に浸入してきていて、何を言おうとしてるのかは言われる前に分かる。
 つい思いおこしてしまうみんなの姿
(お兄さんの仲間に生きていること伝えなくていいの? 心配しているんじゃ)
(……別にいいよ。この状況を説明するのも手間だし、彼らは私がいなくなることにもなれてるからきっと気にもしてないよ。ついに死んだかって思ってくれるはずだよ)
(·········お兄さん)
 太宰は一度思いかべた顔を脳裏から消して答えていた。子供の声が悲しげになる。じわじわと思いがしみこんでいた。
(大変だね)
(まあ、そうなのかもね)
 子供の声が聞こえなくなる、それでもわずかずつ感じる思いにふたするよう太宰は目を閉じた。それで聞こなくなるなんてことはなかった




元に中々戻らないし、戻ったあとも後遺症的な奴で眠れば太宰さんはコナンくんの中に自由に行けるようになる



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