シャワーから流れ出る熱い飛沫を浴び、体中に付いた歯型と小さな赤い跡を確認する。
「・・こういうのは中々治らないって一体どういう作りなんだよ、俺の体は・・」
バスルームに反響した自分の声はなんだかひどく浮ついていて、もしかして喜んでんのか?なんて疑いたくなる。シャンプーを手に取り、頭をガシガシと洗っていたら、俺の背中に冷たい風が当たる。
「なんで一人でシャワー使ってるの?」
振り向けば、頭に寝ぐせをこしらえた臨也が不満気な顔で扉を開けている。
「なんでって、普通シャワーは一人で使うもんだろうが」
「え〜、いつも一緒に使ってるじゃん、こういう事した後にはさ?」
臨也は自分の肩についた爪痕をトントンと指でつつきながら、ニンマリと人の悪い笑みを浮かべた。
「・・・寒いんだから、入るなら早く扉閉めろ」
ニコニコしながらバスルームに入ってきた奴の顔面に、思い切り威力を上げたシャワーを向ける。
「ヴぁ!!・・びゃ!・・びぼび!!」
「何言ってんだか、さっぱりわかんねぇな〜」
「びばいっで!!・・ぼう!!痛いって言ってるだろ!!」
攻撃を止めてやれば、血行が良くなったのか、顔を赤くして俺を睨む。濡れた漆黒が額にぺったりと張り付いていた。
「ああ、これが本当の水も滴るいい男って奴だな」
「全然嬉しくないよ・・」
手で前髪を掻き上げ、額を見せた奴は赤い目を細め、俺の手からノズルを奪う。
「さ、俺がやってあげるから後ろ向きなよ?」
「・・嫌だ、手前ぇ、普通にしねぇじゃないか・・」
「普通?普通って何?俺に教えて?そしたら今度から上手くできるじゃない」
顔をギリギリまで近づけて笑う臨也の表情は、断れば面倒な事になる前兆のソレだった。
あーあ、こいつも馬鹿だが、大概俺も馬鹿だなと思いながら、浴室のタイルに手をつく。
「ふぅ〜ん、成程ね、中指と人差し指を交互に使って?逆の手でそこを押し広げるのか〜あ、本当だ!すっごい垂れてきた、俺の」「臨也!!誰が実況しろって言ったよ・・!?」
振り向いた俺は、しゃがんで頬杖をつく奴をキッと睨んだ。
「・・ごめん、ごめん、夢中になって勉強してたから声が出てた」
「・・もういいだろ?早くシャワー浴びて出てけよ」
前を向き直ってノズルを取りだそうとすれば、背後から抱きとめられ体に腕を巻きつけられる。
「じゃあ、次は実践授業ということで」
耳の後ろをべろりと舐められ、片方の腕で俺の後ろをまさぐり始めた。
「お、い・・!止めろ!・・あうっ!!」
「あれ?こうじゃ無かったっけ?先生?」
ズブズブと遠慮なしに何本も指を突っ込んでくる臨也は、背後で嗤っていやがる。
「誰、がっ!先生・・・だっ!」
「お願いだよ先生ぇ、俺にきちんと教えて?じゃないと勝手にするけど」
グリと奥を刺激されれば、俺は体を仰け反らせた。
「ひぃ、ああ!」
「先生?ココこんなにして、如何しましたぁ?」
俺の下半身を後ろから見てクツクツと笑う臨也は尚も手を緩めない。
「・・・ったく悪い生徒だなぁ・・特別授業してやるよ?」
臨也の上に跨って腰を落とせば奴は口の端にいつもの厭らしい笑みを浮かべる。
「良い眺めだなぁ・・」
「もっと良くしてやるよ、その減らず口が無くなるくらいにな・・」
激しく腰を動かせば、ニチャニチャという音が耳に聞こえる。臨也の荒く吐きだす息と、苦しそうな表情が俺を昂ぶらせる。
「はっ・・!手前ぇの、その余裕の、無い・・顔ったらないぜ・・!」
「・・ふっ・・シズちゃんも凄い顔してる、よっ・・!」
臨也は眉根を寄せ、その綺麗な顔を歪めていたが、赤い目は情欲を宿し鈍く光っている。
「・・はぁ、このまま溶けそうな位に、熱ちぃ・・気持ちが良い・・!!」
「俺も・・シズちやんの中で溶かされそう、だっ・・!」
冷たいタイルに暫く横たわっていた俺の太ももに手を滑らせ、局部を触られる。
「・・もう無理だぞ」
「違うよ、また中に出しちゃったから」
俺の髪にキスしながら、優しい手付きでほぐしている。
「なんだ・・やれば出来るじゃないか」
「俺って昔から優秀だったでしょ?・・あ、また鎖骨噛んじゃったね、痛くない?」
「お前、俺と何年一緒にいるわけ?」
「体質忘れるくらいには?・・でも、せっかく跡つけても明日には消えるんだよね・・」
勿体ない、言いながらまた噛みついてくる奴から逃れる為に立ち上がる。
「ああ、今の俺に汚された君をこのまま取って置きたいな」
俺は急に足が震えだし、タイルに膝をついた。
「・・な、に」
「やっぱり腸から摂取すると効き目早いんだね、君でも」
風呂の縁に手をついて再び立とうと試みるが、ずるりとその場に滑るだけで徒労に終わる。
「やめときなって、そのお風呂硝酸入りで危ないんだから」
体が重い、口も上手く聞けない。俺は無言で奴をみた。
「何その顔?悪いけどこっちが絶望したいよ・・どうすればシズちゃんは傷つくの?俺の残した跡を体に残せないの?どうすれば俺の所有物って印つけられるの?だから今の君を永遠に目に焼き付ける。」
俺の髪の毛を掴み、笑う臨也は子供の様に無邪気に笑う。
「俺の愛でゆっくり溶かしてあげる」


浴槽に頭を入れられた俺は、そのまま深淵に沈んだ。






永久機関4






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